「一身上の都合」を読む

一身上の都合

一身上の都合


辞職の理由として慣習的に使用される、あの無機質な6文字に滲みだす愉しい情念のエピソードの詰め合わせ。

日本で個人が辞職や転職をするのはすこし大事だ。ちょっとだけただごとではない。幸せを掴み取る者がいる、こんなはずじゃなかったと後悔する者がいる。意に反して辞めた者もいる。傾いてゆく職場、責任を押しつけあい、引きとめ工作で時間を稼ぎ、たがいに理不尽な策謀と権力をふるった。ある者はあまりにも楽観的/悲観的な見通しに拘泥し、家族や周囲との関係がめまぐるしく蠢いた。そして楽園はあまりにも遠く。

いずれにせよ、人が馴れ合ってきた全てを捨てる決意を元に生まれ変わる瞬間には、時にすさまじい感情や人間関係の摩擦が発生する。得てきた故に捨てられず今を食いつぶしていく人間は多いと聞くが、ココではどうなのだろう。