飛行機雲

晴れ渡る空に幾筋か、毛糸を転がしたような飛行機雲が夕日に照らされて輝いている。糸の先端についた小さな針は、瞬くこともなく静かに筋を描いていく。奇異な光景だ。

もし「飛行機」というものを知らなかったとしたらこの現象をどう解釈するだろうとすこしだけ思考を巡らせたふりをした。数百トンの鉄塊が落ちることも無く音速に近い速度で高度10000mを水平移動しているという結論にたどり着くだろうか。それとも、どこかのジャングルの部族のように神の鳥として崇敬するか、恐るべき天体現象として片付けてしまうだろうか。

あるジャンボは翼が辛うじて視認できる程度の距離(仰角)にあった。それは元の形を知っているが故の心眼、単純にはただの十字架が飛んでいるようにも見える。距離については肉眼の遠近感の外にあることは確認できる。この速度で運動しているものを三角測量で図るのは特別な器具を用いない限りそれなりの工夫が必要だろう。