「世界に一つだけの花」の残念な結末:その1

「『正しい日本語』なんて存在しない。」という言葉はありがちだが、
その視点をすすめるならば、そもそも"日本語"など存在しない。

我々が観測する"言語"はドイツ語や日本語といった抽象的な存在ではなく、常にニーチェ語や芥川語、小泉語、active_galactic語といった個人から発露される言葉の集合のみだ。どこかに標準日本語原器なるものがあってそれを人間が機械的に再生しているのではない。何千万という人間が一定の大綱を共有しつつも、ひとつとして同じ体系は存在しない。個々人で語彙や言葉のニュアンス、意味合いの微妙にあるいは大いに異なる言語が無数に存在しているだけだ。語彙の組み合わせだけに絞っても完全に一致する人間は存在しない。3単語もあれば世界でその本人しか知らない単語の組み合わせは構築可能だ。

と適当な戯言を垂れ流した上で、実のところ3単語で自分しかしらない単語の組み合わせが作れるかやってみたいだけだ。ローカルネタや固有名詞が使えるなら簡単。

  1. 小学3年の頃住んでいたアパート名
  2. サークルの某後輩の名前
  3. 某所に左遷された中学校の頃の教員の名前

この3つの単語を全て知っているのは世界で自分だけだと断言できる。ドメスティックな固有名詞がありなら誰でもこのような単語の組み合わせを見つけ出してくる事は容易だ。では世界の何処に住んでいる人間でもある程度アクセスする機会のあるグローバルな単語や一般名詞に限定すると存在するだろうか。「ブラックモンブラン」や「名寄西小学校」といった無数にあるローカル単語を組み合わせるという安易な手法はとりあえず禁止して縛りを入れてみる。

  1. wimpzillas
  2. NK15 engine
  3. Chigiri Akiyoshi

世界で一人だけという状況を作るには、要するにマニアな単語を3つ組み合わせればいい。個別でもほとんどの人は聞いたこともないだろう用語達だが、全世界区の単語である以上、それなりの認知人口は有している。そのため、各々の単語の認知層を重ならないように注意する必要がある。

wimpzillasはダークマターの1つであるwimpのさらに一部のマイナー分野でGUT-perticleの一種。Googleヒット数は世界で2700程度、一人当たりが作成するドキュメントの数を考えるとどれほどの認知度か想像がつくだろう。ダークマターは一般にも比較的認知されているが、WIMPはある程度勉強していないとしることない単語、wimpzillasの認知度はその数十分の1だ。NK15 engine は旧ソ連のN1ロケットに使われていたエンジンで、30基のNK15を束ねる事でサターンVのF1エンジンを超える推力を・・・とこれ以上書くとアレなので省略する。Chigiri Akiyoshiは日本のマイナーなアーティスト。実質的に日本限定のローカルネタなのでこれを含めていいかは微妙だが、いちおう全国規模なので判断は保留しておく。秋吉契里でごっそり絞った上で、wimpzillasで完全に落とす作戦。最後にNK15で駄目押しをすれば、この組み合わせは世界で自分だけしか知らない単語セットである可能性はが十分にある。

Chigiri Akiyoshiが日本ローカルネタということで使えいないなら、tertiary butyl group(ターシャルブチル基)のように化学用語あたりで絞ることを考えてみたが、全部理系単語にしてもあまり効果はないだろう。一定以上の理系雑学があればこの全てを知っている危険性が大いにある。それではわざわざ絞り込みに使う意味が無い。因みにターシャルブチル基は前3者と比べてそれほどマイナーではなく、一般の知名度は小さくても、一部の有機屋相手にはザルだ。理系用語から外してTaruho InagakiやA New Philosophy of Society: Assemblage Theory and Social Complexity ( Manuel de Landa)みたいな路線で選ぶ、L/SMR(puyopuyo)やholding(tetris)ようなアレげな方向で行った方が確実性は高まるかもしれない。