遥か遠い宇宙の彼方でデススター銀河が発見される

active galactic というタイトルをつけているからには、AGN(活動銀河核)関係もいちおうあつかうよ。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0712/19/news067.html
http://chandra.harvard.edu/photo/2007/3c321/animations.html#3c321_anim1

NASAのChandra X-ray宇宙望遠鏡は、へび座の方向に地球から14億光年の距離にある双子銀河3c321において、大質量ブラックホール*1から放たれたジェットが2万光年離れた片割れの銀河を直撃している光景を発見した。

もし、ジェットの通り道に地球があったらひとたまりもないだろうね。大質量ブラックホールの放つジェットは膨大な高エネルギー粒子を含み、通り道にあるすべての生命を絶滅させるに十分な死の閃光だ。その射程距離は100万光年(天の川銀河の10倍)を超えることも珍しくない。この写真では火炎放射器のように噴出したジェットが銀河をまるごとバーベキューにしている光景が写っている。

<<なぜ、ジェットが発生するのか。>>

ブラックホールは何でも吸い込む天体ではない。確かに、事象の地平面の中に吸い込まれた物質(平たく言えばブラックホールに吸い込まれてしまった)は普通帰ってこないが、その外側では複雑で激しい活動が起きており、物質が外に弾き飛ばされることもある。

ブラックホールの近傍ではその強大な重力により物質が光速に近い速さで回転している。地球の場合だと衛星が地球を一周する軌道周期はせいぜい90分だが、太陽質量ブラックホール近傍軌道では1000分の1秒の世界だ。ブラックホールに落ちていく物質は、ダスト同士の摩擦熱だけでも太陽の数百倍の灼熱に加熱される。ブラックホールの近傍のダスト円盤は100万度以上に加熱されプラズマ化した物質が飛び交い、膨大な電流が発生し強大な磁場が巻き込まれている世界だ。

月が地球に落ちてこないように、物質はそのままでは重力源に落下することはない、ブラックホールに物質が吸い込まれるにはエネルギーなり角運動量を失う過程が必要だ。落ちていく物質は様々な過程で質量エネルギーの約半分を外に解放させることになる。水素核燃焼の100倍の効率だ。これがブラックホールの激しい活動の原動力になっている。ブラックホールに落ち込んでいく物質は強力な電磁場の渦に巻き込まれ、一部はダスト円盤の回転軸方向に光に近い速さで弾き飛ばされることになる。軸方向に発生した亜光速の物質流は先行する物質に追突し膨大な量のX線ガンマ線を発生させる。ジェットを送り出す竜巻状の磁場のなかでは激しい反応が起きており、数十万光年に達する物質の奔流を作り出す。

*1:一般には太陽の100万倍から10億倍の重さ