宇宙論:世界の裏側に行く方法?

この世界の外にある「裏世界」というとゲームや小説の中だけの存在のように思えるかもしれないが、余剰次元や影宇宙やHidden Sectorなどの裏世界を想定することはそ現代の自然科学ではれほど突飛なことではない。理論屋の空想の中だけでなく実験屋の世界でも、そのようなものを仮定した場合の測定系への影響を考察するような事例はいくつも存在する。

ひも理論の人たち的にも、宇宙論の人たち的にも、素粒子の人たち的にも、裏世界の存在を仮定したほうが色々と便利な状況が多いのでこのパラダイムは重宝されている。超弦理論は正常機能のために一般に10次元の世界を要求しており、この4次元時空の外に余分な次元が必要だ。宇宙についてもバルクからの暗黒輻射のお話などがあるし、素粒子理論にしても階層性問題や「超対称性の破れ」の関係でこの世界の外に構造を要求している。大きな大統一ゲージ群を分ける簡単なお仕事の人たちも、影宇宙のように振舞う分割断片を大量生産している。

絶対必要という確度レベルには至っていないし測定可能圏に入るかもあやしいが、理論上あると考える方が便利だし、「あるんじゃねー」というのが業界の空気としてはある。

ま、とりあえずあったとして、どうやって遊びに行くかだけど、この世界の安定性からし素粒子単体レベルですら極めて稀な現象に頼ることになる。推定される現象の頻度は現在の検出限界よりも何桁も下だ。カップリングやメッセンジャーがあったとしても、恐ろしく弱い結合だろうし、重力でどうこうするのも隔靴掻痒な感じがする。量子トンネル効果で気付いたら裏世界にいました、っていう確率は0ではないにしろ恐ろしく低い。

ただ、ブレーン間の距離を考えると、モデルによっては東京からパリにトンネルするよりは起こり易いかと。