土星の衛星タイタンの地下に海?というありがちな話

タイタンの表面が動いているらしく、地下100kmに海がある可能性があるというニュースが入ってきた。

あまり品のいい言葉では無いがそろそろ"海海詐欺"という言葉を作ってもいいと思う。古くは金星や火星、近年ではエウロパカリストあたりが挙げられる。タイタンも表面に広大な海が広がっている可能性を元にした想像図が数年前には書かれていたし、火星においても時々「水の流れたあとか?」みたいなニュースが流れる。話は太陽系に限らず、系外惑星についても「水を発見」「生命の存在の可能性が」「生命が存在するのに適した距離の」「大きさが地球に近い」といったニュースは数限りない。

「地球以外の天体に存在する海」は惑星科学では地球外生命の発見にもつながる非常に重い意味を持っており、可能性ベースでもかなり大きなニュースとなるし、大々的にプレスされてしまう。

液相の水がそれらの天体に大量に存在していたとして不思議ではないし海の存在を否定するつもりはない。宇宙で水は普遍な存在であり、適切な条件さえ整えばどこにでも海は存在できるし、実際に海をもつ天体はこの宇宙には無数に存在するだろう。ただ現状の観測計画で決定的な証拠を発見することはかなり難しく、5年、10年で確認できる話とは言いがたい。それまで何十回も「海が存在か?」とオオカミ少年みたいに繰り返さなければならない未来はほぼ運命づけられており、「小惑星が衝突する可能性」のニュースと同様に受難の道が待っている。

既に太陽系内での天体表層太洋の存在は絶望的、地下海を探すにしても適当に掘れば当たる代物でもないし、地上/軌道上からの観測では他の可能性を否定しきれない。また、ボーリングを何百キロを行うのは技術的に難しいし、地下だとスペクトル解析という魔法の道具が使えない。地熱や地上噴出物から推定するとか、磁場や地震波をつかって間接的に推定できるぐらい。

今後も困難ではあるだろうが、発見は待ち望んでいる。