川上未映子が芥川賞を受賞したことについて

乳と卵

乳と卵

芥川賞といってもすこししょんぼりな作品は午後5時のコロッケなみにあるのでそれだけでは評価できないのだけど、ついに芥川賞作家になってしまったということで、とても遠い世界にいってしまった感もあるが、やー、元から遠かったという説はブースト段階ですでにリンパ液のように溢れていた才能の片鱗をみれば十分な説得力を持つのだけど、「まさか、ここまでいくとは」と「なーんだ、ただの天才か。」がくるくる反転して感想がかざぐるまみたいに渦巻いている。

川上未映子の純粋悲性批判

私がこのアーティストを知ったのは2004頃、絶望書店の店主が文章をベタ褒めしていたのを聞いてリンク先に飛び、確かに名状しがたい言語怪物の存在を確認した。特に短文やポエムにはスタンドか怪力乱心の類が住んでおり、言葉をつないでいく連想力妄想力の高さや単語のチョイスと描写力はとても凡百無名素人とは一線を画する代物だった。とまぁ、これ以上書いても無限ループ絶賛しかできないのでこの辺で適当にCut-Offして繰り込んででおく。一度凄いと思ってしまった作家は冷静に評価できないものと相場は決まっている。

ちょうどアルバムが出たときとiPodを購入した時が同じ頃なので、最初期にiTunesに登録された古参の一人でもある。これだけヤバい文章を書くのだから曲のほうもさぞ凄まじいものだろうと思っていたら案外普通で、このままマイナー歌手として消えるだろうという寂しさとともに、名も無き神を見つけた喜びがあった。後に芥川賞をとるとは予想すらしていなかったが、3年ほど前に細々と書いていた日記はこの文体の影響を受けなかったかといえば嘘になる。

因みに、文体の持つ引力だけで当時からアンテナ/RSSに登録している残弾はあと4人ほどある。一人は、Wired黎明期の暗黒にして愛憎と退廃的衒学遊戯の極地だったのだが、精神科一直線で生活自体が危うい状況、別の一人はワイルドな日常の中に茫漠とした寂寥感のある内面を抱えた文体だったのだが、いつのまにか文学賞に応募するような文人になってしまっている(一応、最終選考まで残ったりしているようだ)。別の一人は透明な文章で後にブログ出版をしたけれど、細々と売れているんじゃないかな。最後の一人は面白いけどゴースト??