1930年以降の理論が話題になることってほとんど無いよね

量子力学」や「相対性理論」は、テレビで最先端の科学のように語られることがあるけれど、もう古典中の古典に分類される。なんというか大正ロマンの香り。普段私たちが見聞きする物理理論の多くは、100年以上前に確立している。

「信じられるかい?相対論的量子力学が出来たのって、1920年代なんだぜ。」って誰かが言ってたが、既に20世紀初頭でこれだけのことは語られていた。

1900年代黒体輻射式、特殊相対性理論、光量子仮説
1910年代一般相対性理論ブラックホール余剰次元理論
1920年膨張宇宙論シュレーディンガー方程式、量子電磁気学ディラック方程式

5次元萌えでおなじみのカルツァクライン理論が出来たのも1920年代のことだし、皆既日食で時空の歪みを示した有名な写真も1910年代の話になる。ディラック方程式が生まれてから今年で80年、流行りの「ひも理論」ですら40歳になる。

戦後の理論は世間に存在しない

1930年代以降の理論物理がネットで話題になることはまずない。研究は活発に進んでいるけど、ごく一部の物理掲示板や学生/研究者ブログでネタになっているくらい。相対性理論量子力学とはその注目度に雲泥の差がある。

現代の物理理論は初学者にとっての呪文度がひどいことになっている。粒子or波・銀河・時空といった誰でも想像できることを議論していた時代は終わった。reheatingやlandscape、Moduliがどうのだとか、Fluxを入れるだとか意味不明な詩でしかない。これでは話題にしようがないし、仮に話題になっても「よくわからないけどスゴイ理論らしい」というゴミ箱に押し込まれていまう。

「この宇宙が11次元って何故なの?死ぬの?」

って聞かれて、そのような発想に至った過程を押さえた説明をするには、書籍にして最低数十冊分の前提知識を紹介し、なおかつ相手が飽きない手短な分量にまとめることが要求される。ある程度、誤魔化したり、ピックアップして減らすにしても限度はある。

現代は、時空の歪みだの量子だの議論していた時代から、100年近い実験と理論を積み重ねている。この蓄積抜きに理論を語ることはできないが、それは多くの人にとって極めて長く苦痛を伴う作業になる。しかし、それを省けば何度聞いても理解できない超理論のまま。

将来的には誰もがイメージしやすいような上手い説明があると期待しているけど、私の力では、例えば「11次元超重力理論」を紹介することはできそうにない。