サイエンス記事のよみかた[基礎編]

詳しくない分野の科学記事を読むときに、知っておくと便利かもしれない事をいくつか書いてみる。

科学ニュースの8割はブラフ

研究者は役人を説得して予算を獲得するために必死である。外向きの宣伝では結構、夢のまた夢みたいな夢を加えて話したりする。そしてその夢想みたいなところほど記者は食いつきやすい。「そういえばあのニュースは結局どうなったの?バラ色の未来はどこ?」とぶり返すのは野暮というものだ。そう簡単に宣伝文句どおりの世界は訪れないので、期待して読んではいけない。

NGワード:「究極的には」用例:「騒音がほとんど発生せず、水しか出さない究極のエコ旅客機の実現が可能である。」

「○○の課題はあるものの」とあったら10年は実現しない

その○○の課題こそが研究を阻む最強で最大の障壁であって幾多の研究者を葬り去ってきた怪物である。○○の課題はあるもののもうすぐ我々の生活を変える日が来るだろうと書かれながら、何十年も停滞している研究はあまりにも多い。

  1. この素子はデコヒーレンスと集積化の課題はあるものの
  2. 次世代記録メディアは耐久性の向上と低コスト化の課題はあるものの
  3. プラズマが不安定になる問題はあるものの

ブログやハテブを参考にしてはならない

記事の7割は記者会見のコピペである。何言っていたかさっぱりわからなかったけど、とりあえず会見資料を適当に要約してみました的な意味不明な記事も多い。それに「これはすごい」みたいなタグを付けて、脊髄反射的一行コメ。よくわからないで書かかれた記事に読者の読解力と妄想が掛け算される。どうしても参照意見が欲しかったら以下のどれかを実行すべし。

  1. その分野を基礎から勉強する
  2. 原論文にあたる
  3. 公式サイトでプレス情報を見る
  4. 専門か近郊分野をやっている人の感想を聞いてみる

「○○できるかもしれない」の7割は記者の妄想で出来ている。

のこりの3割はバファリンみたいなもの。バファリンの半分は「やさしさ」という名で知られる研究者による予算獲得のためのロビィ活動、もう半分はただの頭痛だと思う。

「かもしれない」で受ける文は不要なので黒塗りにするべし。例:「この技術を人間にも応用すれば、2020年には人類の寿命は200才を超えているかもしれない。」

因みに「想像してみてほしい」は9割妄想だ。妄想はブログとチラ裏で十分。例:「昼にパリで買い物をしてニューヨークのレストランで夕食をとる生活を想像してみてほしい。」

「サイエンス/ネイチャー○月△日に掲載」の場合はガチ

ただ権威主義と思うなかれ。査読付きで著名な雑誌はフィルタリングの格が違うよ。たまに「ト」が貫通したりするけど。特に表紙を飾った研究は大抵すごい。非専門で判断する材料を自身で持ち合わせていない場合はとても重要な指標だ。専門だったら、ちゃんと自分の頭で判断すべし。

注:論文誌や公的機関の発表は信頼性が高い傾向にあるが、「DARPA」とか「米軍」とかかれていたらただのSF小説である率50%。例:「DARPAは三日間寝ないで戦闘を続けられる兵士の実現を目指して」

「だがこれを疑問視する研究者も多い。○○大学の△△教授は」は8割正論

「ザ・マジレス」というやつ。ニュースになるような記事は、すこし電波だったりマイナーな奇説であることがそれなりにあり、それに対して「ねーよ」と突っ込みが入るパターンだ。結局、つっこみのほうが正しいことが多い。