テポドンってどんな風に降ってくるのだろう

宇宙から目視できるくらいの速度でビーム状の何かが降ってきて大爆発を起こすという描写はゲームやフィクションの世界でしばしば見られる光景だが、現実の世界でこれにもっとも近い光景をあげるとしたら、大強度レーザーなどではなく、おそらくICBMSLBMなどの長距離弾道ミサイルの類だ。

上の写真はCGではない。アメリカがかつて保有していたICBM (peacekeeper)の大気圏再突入試験のものだ。地上から打ち上げられた弾道ミサイルは、30分程度で数千キロ以上飛行する。遠地点付近でいくつもの弾頭に分かれた再突入体がそれぞれのターゲットに7km/sの極超音速で落下する。再突入体は大気を押しつぶしながら高温になって光り輝き、その表面は蒸発しながら急速に消耗する。実戦ではこの閃光の一本一本の先に核爆発が伴うことになる。

核ミサイルが大気圏に再突入するときに私たちが目撃する光景は、地球上で現実に発生しうる現象でありながらどこかSF的で実にリアリティにとぼしい。

この写真は飽きるほど観測した「流星」にすこし似ているけれど、決定的に何かが違う。

宇宙からすさまじい速度で閃光が降ってきてすべてが破壊される。突入角度もスペースシャトルなどの有人宇宙船とくらべてかなり深い。

現代社会を永久に変えてしまうような爆弾を何百と積んだ潜水艦が、今も海中病棟を徘徊していることに実感がわかない。核戦争そのものにリアリティがないし、普段は意識することすらない。

たとえばテポドンやノドンといった、日常生活に弾道ミサイルが降ってくるという非現実的な光景は、911のように実際に事が起こるまで想像すらできないだろう*1。そして、崩れゆくビルや町並みを別の世界の出来事のように嘘くさく感じて、「ああ、映画みたいだ。」といった倒錯した感想を漏らすことになるだろう。もし生きていれば、私が現実を受け入れるのは恐らく数時間後。

*1:半島から飛んでくる場合は、単弾頭だし秒速2キロ程度と速度が遅いのでこんな異様な流星群にならないと思う。あと、この写真の露光時間がわからないので、肉眼だとやや違う印象をうけるかもしれない。