太陽は資源のかたまり、技術さえあれば

以下、気分転換に、適当に思いついたことをメモしただけ、話はまとまっていない

太陽から資源を採掘できるだろうか。

これから数億年後、あらゆる惑星のエネルギー資源が枯渇した超未来を考える。木星すら絞りつくされた状況で最後のエネルギーフロンティアになるのが太陽だ。太陽系の質量はその99.9%が太陽に集中しており、エネルギー生産量に関しては99.9999%をはるかに超える。太陽から放射されるエネルギーは4e26ワットに達しており、100万キロワット級原子炉40京機分になる。それほどのエネルギーを1000億年*1に渡って放出できるだけの水素が埋蔵されている。現在の核技術で扱いうる重水素に限定して5桁落としたとしても、現在の世界一次エネルギー消費にして3000京年はしのげる計算になる。

太陽にストローを刺せないだろうか

太陽の表面温度は高々6000Kしかない。黒点に限って言えば4000Kだ。

やや専門から遠いので自信はないが、冷却と放熱さえ十分ならば一時的に数千℃の高温に耐えるストローをつくることは原理的には可能だろう。無論、 4000Kの灼熱に単独で耐える物質は存在しない。最も融点の高いダイヤモンドやタングステンですら3000K強といったところであり、ストロー表面は激しく融解蒸発していく。

しかし、すべてが失われるまでは猶予がある。ストロー外層は気化することでストロー本体から熱を奪い、内部へ熱が侵入するのを遅らせる。大気圏再突入体の耐熱カプセルが外殻の気化熱によって保護されているように、適切な素材で十分な厚みの外層があれば少なくとも数分程度は耐えられる。

それ以上、たとえば数時間以上ストローを刺すとなるとどうすればいいだろう。常識はずれの冷却機構が必要になるし、喪失した外層の補填も必要だ。通常の環境でなら現代で最も冷却能力が高いとされる液体金属冷却をもちいれば、メガワットだろうとギガワットだろうと輸送できるだけのポテンシャルがあるのでなんとかなりそう。ただ、ここまで過酷な状況で動作するシステムが組めるかは未知数。

超高温への対応となると核融合炉が知られており、強磁場に荷電粒子を巻き付けることで壁面との接触を防ぎ数億Kのプラズマを閉じこめることを可能にする。しかし、磁場は万能バリアではない。核融合炉とストローでは位置関係にしろ密度にしろ環境がまったく違う。網羅的に検討したわけではないが、ストローにプラズマが接触するのを防いでくれる都合のよい磁場は期待できない。

逆に太陽黒点の温度を下げるという解決方法を模索する。熱伝導率の低い物質を黒点に流し込んで熱を迂回させる案をすこしだけ考える。たとえば適当な惑星を放り込む?黒点の温度が低いのは、磁場によってプラズマ対流が阻害されて下からの熱が伝わりにくくなるからだ。ならばより強力な磁場をもちいれば、局所的にもっと温度を下げることも可能かもしれない。一時的にでも3000Kを切るのであれば熱平衡でも溶けない物質は存在するし、熱対策もすこし楽になるが、非現実的な強度と規模の磁場が必要になる。

そのような強大な磁場が使えるなら、プロミネンスよろしく磁場だけでガスを持ち上げることができる。太陽から物質を取り出す方法は自然が教えてくれる。 CME(コロナ質量放出)で放出される質量のオーダーは数十億トンであり、これを人為的にコントロールできるのであれば、ちゃちなストローよりたくさんの物質を回収することができる。


重力の魔に噛み付かれたらストローはちぎれてしまう

ところで太陽は重力ポテンシャルは底なしだ。太陽の質量は地球の30万倍を越え、はるか彼方の冥王星ですら束縛するほどの巨大さだ。地球程度のちっぽけな重力圏で軌道エレベーターをたてることすら至難の業なのに、太陽に建造することがどれほど難しいか。安直にストローを垂らせば重力で引きちぎられる。高温でも強度が低下せず、しかもカーボンナノチューブの数千倍の強度が要求されるとなれば、もはやこの世界の物質ではない。電磁気力/化学結合ではない未知の力で結合された素材、原子とか分子とかそういうのとは異次元のチート物質。そんなものがあれば何もかも解決だが、現時点では、ただの妄想。

非物質的なストロー、つまるところ太陽磁場を制御するのが可能な解?衝撃波あるいは既にある磁気ループにちょっかいをかける。安易な磁場万能論はどうかと思うけど。

人工超新星は可能か

太陽から取り出して使おうとするから大変なんだ、ということで重力井戸の底(太陽)にある水素をそのまま燃やすことを考える。太陽に何か異物をいれて、新星なり超新星を起こせないだろうか。

エネルギーを大規模に利用する方法としてはダイソン球が知られている。太陽を1ないし2天文単位のシェルで覆ってしまって、すべてのエネルギーを活用する。 4e26Wものエネルギーを利用できるが、これは太陽からしみ出してきた僅かなエネルギーを何十億年掛けてほそぼそと利用するだけ。

もっとアグレッシブにいくなら中性子星かなにかをぶち込んで一気に核反応を促進させれば莫大なエネルギーが得られる。例えば、現在の太陽に太陽質量程度の白色矮星が飛び込めばチャンドラセカール臨界質量を超える。超新星はピーク値で銀河系1個に匹敵する明るさであり、最期の瞬間だけだが、第一から第三型宇宙文明になれる。太陽系は秒速1万キロで爆散。

ダイソン球に対抗して超新星球をつくるとすれば、明るさ100億倍というラフな計算でシェルサイズは数光年といったところ、衝撃波が到達すれば粉微塵だけど。

天体同士をぶつけて人工超新星を起こすには、銀河系公転軌道の微調整が必要になり、数億年以上の忍耐が求められる。それでも球状星団なら・・・・。

太陽を軽量化して延命する

上の図は、横軸に太陽質量、縦軸に表面温度、寿命、明るさをとったものである。天体の質量が軽くなると寿命は急激に増大する。4太陽質量で1億年、1太陽質量で100億年、0.25太陽質量で1兆年、0.1太陽質量で6兆年。

太陽から水素を半分ぐらい吸い出せば寿命が10倍になる。なんらかの方法で水素を吸い上げることができれば、大量の資源を確保できる上に太陽の寿命を著しく延ばすことができる。核反応は中心密度や温度に非常に敏感であり、恒星が軽くなると急速にエネルギー生成が鈍って暗くなる。がんばれば太陽の寿命は1兆年以上まで伸ばせるので、数十億年毎に引っ越すこともなくなる。

太陽の寿命が延びるということは、太陽が暗く赤くなるということであり、地球を水星軌道より内側まで動かす必要がある。太陽の波長ピークがシフトすることで、植物の色や色覚など、生態系への影響は多少あるだろう。

吸い上げなくても、太陽を二つに割って近接連星にするだけでほぼ同じ効果が得られる。ただ、星を切るのはちょっと大仕事になる。恒星同士のジャイアンインパクト的な何かを使う方法を考えるが副作用は強い。地球の全球融解くらいは覚悟するべし。

*1:天体としての太陽は 10%の水素が消費され中心付近の燃料がほぼ枯渇した段階で主系列星としての状態を維持できなくなるため、100億年程度の寿命しかない。