君の部屋にリモコンはいらない
午前5時,真っ暗な部屋の中で目が覚める。
記憶を頼りに,もぞもぞと部屋を明るくするリモコンを探してボタンを押す。
そういうのは21世紀の生活ではないだろう。もう映画『Back to the Future』でデロリアンがたどり着いた時代だ。未来的でなくともいいが,もっと時代にふさわしい生活がある。いちいちヒトが機械にリモコンで指示を出すのは00年代までで十分だ。
大量のリモコンをどうするか
恐らく,一般的な家庭には,エアコン,テレビ,室内灯,空気清浄機といった様々な家電に対応したリモコンが存在する。そうしたリモコンをたくさん並べて操作するのは現代的ではないが,これを解決する手段として挙げられる学習リモコンもまだ理想には遠い。学習リモコンを携帯している人は少ないし,UIが使いにくいものも多い。
スマートフォンを万能リモコンとして使うツール類はある。携帯していることが多いので学習リモコンよりややマシだが,家では充電器に繋がれていることも多く,ワイヤレスなデバイスではない。
「考えただけで動く」の先にある家電
いつの日にか,家電は脳インプラントもなしに「考えただけで動く」ようになるのかもしれない。ただ,そこは人類の目的地ではないだろう。「考えないでも動く」ものであって欲しい。
高度な断熱材に囲まれ全館暖房と温度管理が行き届いた部屋において,人間は毎日のように室温のことを考え,機械を操作したりする必要がない。
ロボット掃除機がある部屋において,人間は,いつ掃除をしようだとか,どこから掃除をしようだとか,そんなことに意識を使うことはない。
廊下やトイレに行くとき,明かりを付けるだとか消したりといった動作を考える事はない。勝手について勝手に消えるからだ。
リビングの明るさは外光を補正して自動調光され,冬場の遅い日の出を待つこと無く起床予定時刻に合わせてゆっくりと明るくなる。
そして人間が考えないでも動くだけでなく,機械が生活の事を考え,人間を調律し教育さえするものであって欲しい。現に,いまこの文章を書いている部屋は,Roombaによって,床に一切のものを放置してはならないという圧が作り出されている。
人間が存在を忘れるような存在へ
ルーチン的なちょっとした意識配分,集中作業を分断するちょっとした手間,その種のコストを削ることには,それなりの金銭を払う価値がある。そして,それは1億2億ではなく,普通の市販品で十分実現できる領域にある。
機械の気遣いと人間の快適さが衝突する場合はいくらでも残るだろうから,しばらくは,仕方なく,会話などで修正することになるだろうが,可能な限りの自動化を望んでいる。
人為的な操作が限りなく遮蔽され,認証された音声でしか操作できない状況になれば,権限のない者が不用意に電化製品を操作することも減っていくだろう。例えば,猫や赤子が誤ってリモコンやストーブのボタンを押してしまうといったようなことは,過去のものになる。
そして,いつの日にか,リモコンが何だったのか忘れるような時代になってほしい。*1