超越的サンタクロースはウンルー放射を見たか

はじめに

サンタクロースが赤い服を着ているとされるのは何故だろう。昔のコカ・コーラのキャンペーンのせいといった現実的な主張はひとまず忘れ,赤熱しているからという仮説を考えてみる。

このエントリではサンタクロースが単独犯である場合について考える。単騎で夜(地球の自転を加味して24時間+α)のうちに世界中の子供達にプレゼントを配り切る超越的存在はどのようなスペックを有しているだろう。

移動速度は亜光速

単独犯である場合,サンタクロースは光に近い速さで移動できると推測される。世界中に散らばった配達先を一日で廻る事は、ジェット機やロケットの速度域では到底不可能だ。

どのくらいの速度が必要かは巡回経路長が決める。15歳未満の世界人口は20億人くらいなので、プレゼントの配達先は数億ノード程度。ノードの平均間隔は,配達先が地球表面に均一に散らばっている仮定でO(1) km と推定される(地球の表面積は海を含めて約5億平方キロメートル)。実際の人口分布は地理的に偏っているので,平均距離はより小さい。トータルの最短経路は10億 km を超えないくらいだろう。

一光日は約250億kmなので最短経路を一回通るだけなら光速の数%でいける。(まだ寝てない等の理由で)同じ地域に何度か再配達に行くことを加味すると,光速の何割かは欲しい。*1

恐らく物質透過能力を持っている

サンタクロースは空気と相互作用せずに移動可能だと推測される。というのも,亜光速のサンタクロースサイズの物体が単純に大気を押しのけて移動したら瞬時に人類が滅ぶからだ。単位時間に開放されるエネルギーは(分子流的なざっくりとした推定で)毎秒水爆数億発くらいはありそう。サンタクロース(と称するプラズマを纏ったビーム)が通過したところ幅数十キロメートルは瞬時に焦土と化し、中間圏に達するような火の壁が立ち昇る。しかし,そのような現象は観測されていない。

サンタクロースは空気だけでなく、石やコンクリート等も透過すると推測される。大気には1e-8 ~ 1e-7 kg/m^3 程度の微粒子が浮遊している。この程度の量であっても、サンタクロースの通過によって亜光速で弾き飛ばされれば進路にそって激烈な破壊が起きる。そのような現象も観測されていない。

以上により、サンタクロースは亜光速で物質を完全に透過しているかそれと同等の結果をもたらす手段を用いて移動していると推測される。

プレゼントは対生成?

サンタクロースのエネルギー源は何だろう。サンタクロースの軌道は,数億件の配達である以上,複雑にねじ曲がっている。反物質のような原理的に100%の効率を誇るエネルギー源を用いても,Δvが亜光速の軌道変更を何億回と繰り返すことは困難だ。

別の宇宙なり真空から得ているにせよ,外部から供給を受けながら飛んでいるにせよ,エネルギー・運動量保存を破っているにせよ,自身の質量を遥かに超えるエネルギーを扱う技術を有している可能性がある。

それほどエネルギーを扱えるなら,大量のプレゼントを持ち運ぶ必要もなく現場で物質を生成しても大した出費ではない。反物質でできた反プレゼントも同時発生することを懸念する方がいるかもしれないが,これほどの技術があるならばビッグバン直後に起きたとされるバリオン数生成,物質と反物質を非対称に生成するくらい朝飯前かもしれない。

超常の加速度

観測によると、サンタクロースの配達先はかなり精密に制御されており,部屋の中の別々の靴下に正確に配置するほどである。集合住宅のような複雑な配達経路を亜光速で通過する場合,ns 単位で進路が変わる。

ゆるく10 ns の時間でΔv ~ 0.3c とし,ガンマ因子を無視しても加速度は10^24 m/s^2に達する。

真空の輝き

中性子星の重力加速度を遥かに超える加速度にサンタクロースが平気だろう事はもはや驚くにも値しないが,これほどの加速度だとウンルー効果*2による放射が恒星の表面に匹敵する温度になると期待される。

恒星表面温度などこれまで述べた極限状態から見れば小春日和のようなもの。サンタクロースは平気だろう。

物質透過に関する議論によりサンタクロースは物質(の電磁場)を感じないと推定されるが,不可視存在ではないので,放射との相互作用は仮定して良さそう。移動中にウンルー放射に晒されているならサンタクロースの表面は放射と熱平衡になっていても良いだろう。

小休止で人間が視認できる速度まで減速したサンタクロースは,真っ赤に焼けた鉄のごとく輝いている。それを偶々目撃した人たちが赤い服を纏った神話的存在がいると誤認した。

*1:サンタクロースがmassless であり真に光速で動ける可能性を否定するものではない

*2:ウンルー効果は,量子場の基底状態としての「真空」を理解する上で面白い現象だ。ある系から見ると粒子ひとつない世界が,それに対して加速度運動量している系から見ると粒子がガリガリ観測される。

豆撒きの攻撃力はどこまで上がるか

節分を前に豆の攻撃力はどのくらいが限界か考えてみる。とりあえず鬼は10mほど離れているものとする。

まず攻撃力には精神的な攻撃力と物理的な攻撃力がありそうだ。精神的な攻撃力については汚らわしさ・尊さ・惨めさ等いろいろな方向性があるがここでは考えない。純粋に物理的な攻撃力について考える。

まずは豆選び

大質量の豆ほどよい。恥ずかしながらWikipedia大先生から画像を引っ張ってくるとEntadaまだは藻玉とよばれる豆があるようだ。大きいもので70 mm程度と,砲弾サイズだ。

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Wikipedia (Bart Wursten; CC BY-SA 3.0)

豆の定義や遺伝子組換えによる大質量化の可能性は脇において,この豆を使おう。

射出速度

想定するレギュレーション次第だが速いほどよい。

鬼に当たるまで豆が元型を留めることをレギュレーションに含めても,このサイズの豆なら超音速で射出しても鬼に到達する前に完全蒸発はしない。砲身から射出したあとサボのようなもので鬼に直撃する直前まで極超音速飛行の熱と応力から保護していいなら宇宙速度くらいまでは元型を留めるだろう。

元型を留めなくていいならば,かなり青天井。とりあえずプランクスケールにあやかって10^19 GeV/u くらいで射出された状況を考える。重心系でGUTにもいかないのではという物言いはあるだろうけど,鬼も反対側から10^19 GeV/uで加速して正面衝突させるのは「豆撒き」とはいいかねる。ほとんど鬼を大気にぶつけているようなものだ。

豆一粒ではせいぜい惑星を吹き飛ばせる程度

豆の質量を一粒 100 gとすれば10^35 Jであり,惑星程度なら吹き飛ぶけど,恒星を吹き飛ばすのは厳しい*1。宇宙が滅んだりもしないだろう。豆鉄砲一発はせいぜいこんなものかという印象だ。

かつて豆だったビーム状の何か

ビームのエネルギーに較べて化学的な結合は無視できるほど小さいので,10^19 GeV/uで運動する豆は,超高エネルギーの電子・重イオンビームとみなすことができるだろう。~10^25 /bunch という規格外の原子核を含み進行方向に限りなく圧縮された規格外のバンチが,限りなく光に近い速さで鬼に発射される。進路上にある空気分子*2を構成する原子核・電子とビーム粒子の相互作用によって,ビックバン直後の宇宙を再現するような高温の火の玉が速やかに形成され,ほぼ光速で膨張する。

離れた天体は蒸発しないが,火の玉から放射されるエネルギーから考えて冥王星あたりにいる人間は地球がみえる位置にいる場合炭化する。

鬼の物理的な強度がどの程度かはしらない

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参考:LHCのAlice検出器で,原子核同士が衝突したときの様子:四方八方に粒子が放射されている。

*1:質量流出があったり,一時的に凹むくらいはするだろうけど,太陽の重力結合エネルギーより小さい

*2:進路上の空気は豆の質量と同程度

阪大入試をダシに音波の話

阪大の物理の入試問題の誤りが局所的に話題になっている。

平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における出題及び採点の誤りについて — 大阪大学
このたび、本学において、平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における出題及び採点に誤りがあったことが判明いたしました。そのため、改めて採点及び合格者判定を行い、新たに30名を合格者としました。

問題の正答について話が錯綜する中で,音波という現象の振る舞いに一部で混乱もみられるので,すこし考えを整理しておこう。

音波の反射に関する位相の扱いが難しいという感想も出ているが,QCDなどに比べれば単純な数学であり,単に慣れていないだけだろうと考えている。

まずは関係式

粗密がどうだとか変位がどうのだとか自然言語でごちゃごちゃ書いたところで混乱が深まるばかりなので,はじめに音波(微小摂動の弾性による伝搬)における各物理量の関係を書いておく。媒質の変位の分布をXとするとき,流速,密度,圧力の微小摂動は次の関係で表される。

\begin{align}
& \delta u = \frac{\partial X(t,x)}{\partial t} \tag{1} \\
& \delta \rho = -\rho_0 \frac{\partial X(t,x)}{\partial x} \tag{2}\\
& \delta p = c^2 \delta \rho = -\rho_0 c^2 \frac{\partial X(t,x)}{\partial x} \tag{3}
\end{align}

媒質の運動速度 \delta u は変位Xの時間変化率であり,圧力変化 \delta pは変位Xの空間勾配(体積の変化率に比例)に比例する。(1)-(3)は運動方程式オイラー方程式)や状態方程式から導出されるもので,壁の中だろうが空気中だろうが水中だろうが成立する。

反射という現象

反射という現象は,密度や音速が不連続になっているところで発生する。密度や音速が異なれば同じ組成(例えば冷水と温水の接触面)でも構わない。

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図のような反射を考え,不連続面を挟んで以下の境界条件を課す。

  • 圧力は連続である。(衝撃波のような極端な圧力波を考えない)
  • 変位は連続的である。(例えば,空気と壁の間に隙間(真空)ができたり,空気が壁に染み込んだりしない)

変位でみた反射波・透過波の複素振幅を適当な係数R, T を使って(4)のようにおく。この時点では,反射波の位相について何も仮定されていない。

\begin{align}
& X = X_0 e^{i\omega (t - x/c_1)} + RX_0 e^{i\omega (t + x/c_1)} = TX_0 e^{i\omega (t - x/c_2)} \tag{4}\\
\end{align}

あとは圧力が連続であるという要請と,最初に示した式から流速や圧力の摂動がすぐに決まる。

\begin{align}
& \delta u = i\omega X_0 e^{i\omega (t - x/c_1)} + i\omega RX_0 e^{i\omega (t + x/c_1)} = i\omega TX_0 e^{i\omega (t - x/c_2)} \tag{5}\\ \label{aaa}
& \delta p = i\omega \rho_1 c_1 X_0 e^{i\omega (t - x/c_1)} - i\omega \rho_1 c_1 RX_0 e^{i\omega (t + x/c_1)} = i\omega \rho_2 c_2 TX_0 e^{i\omega (t - x/c_2)} \tag{6}
\end{align}

反射波や透過波に関する,欲しい各物理量の振幅・位相の関係は,(4)-(6)で概ね語り尽くされている。

反射波,透過波の複素振幅を決める係数R,Tは,(5)-(6)を連立することで得る。

\begin{align}
& R=\frac{\rho_1c_1 - \rho_2 c_2}{\rho_1c_1 + \rho_2 c_2} & T=\frac{ 2 \rho_1c_1}{\rho_1c_1 + \rho_2 c_2} \tag{7}
\end{align}

最初に着目する物理量はどれでもいい

音波の伝搬においては変位,流速,圧力,温度,すべてが変化する。これらは単純な関係(微分とか)でつながっていて,ぜんぶ整合的に動く。変位に着目しようが圧力偏差に着目しようが,粗密に着目しようが音波という現象はひとつである。

特定の物理量XXXの摂動が本質という事はない。

反射波の変位の同位相・逆位相は密度ρと音速cの積ρcが決める

(7)では圧力ρと音速cの積ρcが反射波の複素振幅を決めている。ρcを音響インピーダンスといい,基本的*1に壁のインピーダンス Z_2=\rho_2c_2は空気のインピーダンス Z_1=\rho_1c_1より大きいので,Rは負であり,反射波の変位は逆位相。

\begin{align}
& R=\frac{\rho_1c_1 - \rho_2 c_2}{\rho_1c_1 + \rho_2 c_2} = \frac{Z_1- Z_2}{Z_1 + Z_2} < 0 \tag{8}
\end{align}

位相変化量は物理量によって異なる

Rが負であることを踏まえて,(5)-(6)をみると,空気中を伝わってきた音波が硬い壁にぶつかる場合,圧力は同位相,変位や流速は逆位相で反射することが分かる。同位相・逆位相は着目する物理量によって異なるが,音波の反射というひとつの現象を,異なる視点から眺めたものに過ぎない。

入射側の音響インピーダンスの方が大きい場合

例えば,壁の中を伝わってきた音波が壁と空気の境界で反射する場合,Rは正であり,(4)-(6)から,圧力も変位も流速も同位相で反射する。

変位に関して縦波だから横波だからという議論はそこまで気にしなくていい

変位の向きこそ異なるが,横波である弦の振動だろうが,縦波である音波だろうが,変位や流速は境界(壁面とか端点とか)でほぼ0になる*2

壁の反射は特に迷う所は無いが,音叉はすこし厄介だと考えている。

音源から放射される摂動の方位分布は,発生機構によって異なる。例えば爆弾の爆発なら東宝的に圧力波が広がるし,スピーカーのような膜振動なら双極的な放射になる。

現実の音叉から放射される音波は圧力に関して双極放射的なモードや四重極放射的なモード(こっちが卓越?)が混じっているようである。高調波を無視しても,Uが開いたり閉じたりする振動モード,捻るような振動モード,Uがまるとご揺れる振動モード(双極的な音圧を放射する)があり,箱との響鳴もそれなりに厄介そう。

それらを脇において,圧力摂動が四重極卓越であることを図1および問1が主張しているのであれば,(逆方向に向かう音波を比較した場合)圧力摂動に関して同位相,変位に関して逆位相の摂動を,放射していると見做せる。

一端そう読み取れば,音叉が居座るただ一点を覗いて,不穏な点はない。

音叉の特異点

音叉から放射される摂動の位相は,あくまでも,音叉から離れたところを記述しているものである。遠方の性質を,安直に音叉の位置まで繋いではいけない。

慎重な受験生は,問題文に書かれたように音叉を真に点音源だと見做してしまうと,音叉がまさに存在している位置の各物理量が不定か発散していることに気づくだろう。密度が連続で,流速が不連続な点は流体力学基本法則が許さない。

どうしても発散を除きたい場合は,無限小ではなく有限サイズを仮定して音叉近傍の複雑な場を計算するか,潮汐変形する(有限サイズの)より単純な物体(ただし壁からの反射波は横を素通りするものとする)あたりで代用することになると考えている

最後に

限られた解答時間でどこまでの現象認識と割り切り判断が受験生に求められていたか微妙だが,当事者でない身には音波という現象をいろいろな人が再確認するよい機会

*1:壁がエアロゲルのように軽くゴムのように音速の遅い特殊素材でできているだとか,無数の細かい孔が開いていてリアクタンス成分があるだとか,レーダー等で圧力波の到来を検知してアクティブに壁面を支えるアクチュエーターが動いて波を打ち消したりしない

*2:正確には壁面材質のインピーダンスが無限大でない限りわずかに動いている。その振幅は入射波の振幅に対してTを掛けたものに等しい

海退の地政:海面低下の社会的影響を想像する

いつかくる海退期

地球史において海水面の高さは様々に変化してきた。例えば今から2万年前の海面高度は現在のそれと比べて約130m低く,日本列島は大陸とつながっていた。一方で0.6万年前は海面高度が現在より高く,埼玉は海に面していた。過去数百万年を振り返ると海面高度は100mくらい軽く変動し続けてきた。現在の海水面は温暖化により短期的には上昇傾向にあるが,気候と海が永遠でない以上,現在より低い時代はいつか来る。

海面低下によって水で隔てられた地域が次々と陸でつながっていく過程は社会に大きな影響を与えるだろう。海退がどのように進行していくかざっくりとみてみよう。

ここでは単純に現在の世界地図で海面を下げていったときの海岸線の変化のみに着目する。氷河形成や海面低下によるアイソスタシーの調節は考慮しない。減った海水は虚空に消え,大地は浮沈・摩耗・堆積のない剛体として考える。氷河形成や大氷河の麓に形成される巨大な湖も考えない。

地形データは以下のものを使用した。(ETOPO1: 雪氷あり)
https://www.ngdc.noaa.gov/mgg/global/
描画はGeneric Mapping Tools を使用した。
http://gmt.soest.hawaii.edu/

10m 低下(北方領土と北海道の融合等)

国後島が北海道と融合する。海水面が10m低下しただけで,ロシアと日本の実効支配地域は陸で繋がる。道東に軍事境界線のようなものが形成されるようになるかもしれないし,ロシア軍と自衛隊の衝突もあるかもしれない。

サハリンとユーラシア大陸も融合する。間宮海峡は浅い。

交通の要衝であるマラッカ海峡は,現在でも喫水20m程度に制約されているが,10m低下すると通行は更に困難になる。地域経済に与える影響は大きい。マラッカ運河のようなものが掘られるかもしれない。

500年前は干潮時に歩いて渡れたというインドとスリランカが再び繋がることも見逃せない。タミル人の済む土地が陸で繋がる。

30m 低下(ブリテン半島,スマトラ半島,伊勢湖,…)


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九州,四国,本州は合体して一つの島になる可能性がある。東京湾や瀬戸内海が通れなくなり,伊勢湾は伊勢湖になる。歯舞島は北海道と融合する。北方領土のうち二島は,何万年後かしらないが,いつか北海道と融合するときがくる。(尖閣諸島は大陸だが)

イギリスは時間帯によって部分的に大陸と繋がり島国では無くなっているかもしれない。(十分に繋がるには40mはほしい)

交通の要衝であったマラッカ海峡は,このままだと完全に塞がる。ジャワ島あたりも大陸から伸びた半島になるので,海上交通は今と大きく様変わりしているだろう。

60m 低下(大陸結合)

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  1. ベーリング海峡が繋がる
  2. 北海道とサハリン(ユーラシア大陸)が繋がる
  3. 台湾島と大陸が繋がる
  4. アイルランドと大陸が繋がる
  5. オランダの国土が激増

東アジアの地政が大きく変わる。ロシアから人間や車が陸路で北海道に来られるようになる。大陸から台湾まで陸路でいけるようになる。その時代まで国境線というものが残っていたなら,突発的な事態による国境線の動きやすさがだいぶ違いそう。

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ベーリング海峡が繋がり,アフリカからアジア・北米を経て南米まで陸路でいけるようになる,

120 m 低下 (2万年前相当)

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  1. 黄海の消滅(朝鮮半島は半島でなくなる)
  2. 日本海は内海へ
  3. 朝鮮半島と日本列島の結合
  4. 尖閣諸島が大陸と繋がりはじめる

かつて九州とよばれた土地が大陸と繋がるのはけっこう遅い

7000m 低下 (数億年後?)

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海水面は気候等が理由で短期的(数千年〜数万年くらい)では上がったり下がったりしているが,長期的な視点(数億年〜)でみると低下傾向にある。40億年前は大きな大陸も無く惑星のほとんどを占めていたであろう海の面積はいまや地球表面の7割まで低下した。ここ数億年はマントルが冷えて海水をがぶ飲みできるようになったという話が出ており,地球の海の歴史も終盤に差し掛かったといえるかもしれない。

マントルへの海水の逆流の推定されるペースで海水喪失が続いた場合,地球を脱出しないことを選んだ数億年後の人類は,かつて海溝だった湖の畔(巨大地震による地殻変動がやばそう)に集まって暮らすことになるだろうと想像している。それ以外は果てしなく続く砂漠。太陽光度も数%上昇しそれなりに過酷な世界だ。

重力波天文学がはじまる

ブラックホールの衝突に伴う重力波が観測されたというニュースが世界中を駆け巡った。洞窟に残された簡素な暦にはじまる天文学3万年の歴史においても特別な瞬間だ。

今から約400年前,ガリレオが望遠鏡という発明品を使って天体観測を行い,肉眼の限界を超えた宇宙の深淵に至る扉を開いた。近代天文学の到来である。人類が知る宇宙は劇的に広くなった。

今から約100年前,可視光以外の電磁波を観測する望遠鏡がまったく異なる宇宙を人類に見せた。ブラックホール ,分子雲,星間磁場,さまざまなものに満ちた宇宙,20世紀を特徴づける全波長天文学のはじまりである。20世紀末には光子以外の粒子を使った天体観測も急速に発達した。

そしてついに究極の透過力を誇る重力波を使った新たな宇宙観測への扉が開かれた。

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LIGOで観測された重力波

A. 重力波はどんなものか

まず,電磁波を既知として,重力波がどのようなものか比較してみよう。

電磁波が電磁場の波であるのに対して,重力波は時空の歪みが伝搬する。重力波が通過すると空間が変形(伸び縮み)して潮汐力を受ける。超強力な重力波を浴びても,SFのアトラクタビームのように重力波源に引っ張られたりしないし,地震のように上下左右に振り回されもしない。重心は動かないまま全身をいろんな方向に歪められるイメージを抱くとよいかもしれない。

重力波は横波だ。進行方向をzとすると変形はxy方向に起こる。適当な条件とものさし(ゲージ)を選んだ場合,方程式も似た形で表せる。*1

偏波が2つあることや光速で伝わることも電磁波と同じだ。しかし,電磁波と違って90度回転させたら自分自身と同じモードなので,偏波は互いに45°ずれる。電磁波はダイポールアンテナで効率よく発振できるのに対し,重力波は双極子ではだめで四重極の摂動が必要になる。

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電磁波 重力波
振動するもの 電磁場 時空の歪み
縦波?横波? 横波 横波
自由度 2 2
伝搬速度 光速 光速
発生源 電荷・電流の変動 エネルギー運動量の変動
最低次の摂動 ダイポールで可 四重極の摂動から
透過力 物質で散乱・遮蔽 極めて高い
検出のしやすさ 比較的簡単 至難
方程式 \left( -\frac{\partial}{c^2\partial t^2}+\Delta \right) A_\mu =0 \left( -\frac{\partial}{c^2 \partial t^2}+\Delta \right) \psi_{\mu\nu} =0

B. 重力波を観測することで何が得られるのか

重力波の観測が何に繋がるのか,「物理学」「天文学」「工学」の側面からすこし記述しておこう。

B1. 物理学的な意義

重力波は,脱出速度が光速に迫るような真に強い重力下で,時空が激しく変動するような世界でも,相対性理論が正確であるかを検証することができる。

一般相対性理論の検証は,今日に至るまで無数に行われてきた。建物の1階と4階では時計の進みが精密な時計で測定可能なレベルでずれる。地球の自転によって慣性系が引きずられる。近日点移動や重力レンズ効果も計算通りだ。しかし,これらは重力が静的で弱い極限での検証だ。

相対性理論の検証だけでなく,他の理論の検証にも有効である。コスミックストリングなどいくつかの理論で予想されている物体は重力波を放射すると言われている。

重力波分散関係を調べることで,グラビトン(重力子)の質量を推定することが出来る。今回の観測から,重力子の質量は 2.1\times 10^{-58} [kg]以下と推定された。コンプトン波長は1光年を超える。

B2. 天文学的な意義

すでに,今までよく見えていなかった宇宙の一端が人類に示された。AGNやGRBのような激しい天体の深部はしばしば厚い物質に遮られ,光は副次的な効果を見ているに過ぎないことがある。また,降着円盤をほとんど伴わないブラックホール (BH) などを捉えることは難しかった。

今回の観測では,BHの質量がそれぞれ30太陽質量であったことに驚かされた。知っている恒星質量のBHと比較するとかなり重い。このような連星がどうできたかについては色々な議論があるようだ。

また,BHの質量だけでなく回転も測定された。BHは電気的にほぼ中性であり,質量と回転だけで状態が決まる。最終的に出来たBHの回転は理論限界の0.67倍程度であり,衝突前のBHも重いほうが理論限界の0.7倍未満という制約がついた。これもブラックホールの成長モデルを考える上で重要な情報になる。

重力波はあらゆる物質を透過し,宇宙誕生直後の不透明なプラズマだった時代すら貫いて届く。宇宙の晴れ上がり以前,原始の重力波は今も宇宙を満たしている。LIGOとは帯域が異なるが,重力波観測はいずれ超巨大BHや初期宇宙の情報にも届きうる。

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測定されたBBHのパラメタの一例

B3. 工学的な意義

いわゆる「何の役に立つか」的な問いだが,スピンオフとして,震動を極限まで抑える技術や,大強度でも極めて安定した光学系,原子核の大きさより遥かに微小な距離変化を測定する技術が産業界で必要とされる状況はあるかもしれない。

重力は時空のあり方そのものなので,4次元時空に縛られた他の素粒子と違って,重力波余剰次元であっても伝搬するだろう。宇宙モデルによっては,別の宇宙に信号を送るといったことは可能かもしれないが,現状ではSF的与太話の範疇を出ず,21世紀の技術で議論する話ではない。

おまけ

Q&A. すごいエネルギーが放出されたそうだけどどのくらい凄い?

見積もられた重力波のピーク出力は, 3.6\times 10^{49} \mathrm{W}と,太陽の核融合反応3.84\times 10^{26} \mathrm{W}より23桁くらい大きく(別な言い方をすれば1000垓太陽光度),会見では宇宙にあるすべての星のエネルギー消費を足し合わせたものの50倍といった表現もなされていたが,これはそこまでイカレタ値ではない。ミリ秒オーダーの時間で放出されたのでピーク出力は超新星より何桁か鋭いけど,重力波の総エネルギーは 5 \times 10^{47} \mathrm{J}程度で,Ia型超新星の数千倍程度に留まるし,大質量星の重力崩壊で開放される位置エネルギーも似たオーダーになりうる。

Q&A. 地球にいくつ重力波望遠鏡が必要?

単純に到達時間だけの情報を使うと,2つの重力は望遠鏡で測定すると,天球上で円状の領域まで重力波発生源を絞ることが出来る。3点あれば位置特定には十分なように見えるが,重力波望遠鏡はすべての方向からくるすべての偏波に対して感度がある訳ではない。空間の変形方向と,干渉計の向きがある程度噛み合う必要がある。全天をカバーするならもっと欲しい。

さらに言えば,LIGOやKAGRAはすべての重力波帯域をカバーしている訳ではないので,より低い周波数もターゲットにするなら宇宙重力波望遠鏡など別のセットも必要になってくるだろう。

資料:

公式資料は以下のサイトで入手できる
LIGO-P150914-v14: Observation of Gravitational Waves from a Binary Black Hole Merger

*1:ただし,ここで書いた式は弱い重力波の極限なので,非線形な効果が効いてくる領域等では違いは出る。

113番元素に固有名詞を与えることの学術的な意義はなんだろう

理化学研究所仁科加速器研究センター超重元素研究グループの森田浩介グループディレクター(九州大学大学院理学研究院教授)を中心とする研究グループ(森田グループ)[1]が発見した「113番元素」を、国際機関が新元素であると認定しました。12月31日、国際純正・応用化学連合IUPAC)より森田グループディレクター宛てに通知がありました。これに伴い、森田グループには発見者として新元素の命名権が与えられます。欧米諸国以外の研究グループに命名権が与えられるのは初めてです。元素周期表にアジアの国としては初めて、日本発の元素が加わります。
http://www.riken.jp/pr/press/2015/20151231_1/

2015年12月31日に理化学研究所が発表したプレスリリースによると,森田らの研究グループが報告した「113番元素」が認められ,命名権を獲得したそうだ。元素周期表にアジア初の新元素が加わることになる。

この方面に対する期待は人それぞれだろう。私は主に天文学的な関心から,この分野が進展することを楽しく感じている。たとえミリ秒しか寿命のない超重核であっても自然界と無縁ではない。例えば星が重力崩壊を起こすような状況では,中性子の暴風が吹き荒れる中,恐らく113番元素も含めた,何千種類もの原子核が短時間で生成され,多種多様な核反応プロセスが生じる。

また,今回理研が見つけた超重核とは毛色が違うが,中性子星のクラスト(地殻)のような超高圧高密度*1の環境では,原子核がつながってヒモ状になったパスタ相だとか,陽子が数十個に対して中性子が1000個くらいあるような中性子過剰の液滴がうようよしているといった噂も聞く(図参照)。クラスト物質の特性も,ハドロンの計算や中性子星の観測量に多少は影響するかもしれない。何はともあれ,核子が沢山いる系は興味が尽きない。


噂の例,元素名の左肩の数字は初見だと驚くかもしれない。 Negele et al. (1973)

系統名から固有名詞へ

だいぶ脱線したのでタイトルにもどろう。発見された元素は発見者に命名されるまでは113番元素ならUut (Ununtrium) といた系統名で呼ばれる。名称に使われるのは,1=un, 2=bi, 3=tri, 4=quad....と名前を聞けば何番元素か想像がつく規則正しいものになっている。

そういう規則正しい名前が既にあるのに,バラバラの固有名詞を何のために与えるのだろう。研究者のモチベーションになるだとか,成果をアピールしやすいといった社会的な理由はさておき,周期表上の位置が名前から推測できなくなるばかりか,無駄に覚えることが増えて煩わしく思えるかもしれない。

個性のあるものには固有名詞が欲しい?

この疑問に関しては,恐らくではあるが,学術上も利便性はあるのだろうと推測している。たしかに,初学者にとっては,不規則な名詞が並ぶのは余計な記憶容量を使うので煩わい。しかし,単調な規則では表せない各々の個性に慣れ親しむ段階まで来ると,固有名詞の不在がかえって混乱をまねく。

原子番号26や25と呼ぶより鉄やマンガンと呼んだほうが混乱が少ない。第一世代荷電レプトンや第三世代荷電レプトンと呼ぶより電子(e)やタウと呼んだ方が紛らわしくない。第40代天皇というより天武天皇と呼ぶほうが,何をした人か間違えにくい。

恐らく超重元素であってもそうなのかもしれない。

記憶に関する研究はよく知らないので素人予想になるが,コンピュータとは対比的に,ヒトの記憶能力は多数の個性あるのものを単なる通し番号だけで管理することを苦手としているのではないかと推測している。*2

*1:比重は兆のオーダー

*2:防衛界隈ではF-14F-15F-16F-22のように割と単調な名前をつけているそうで,もしかすると単に慣れの問題なのかもしれない。ただ,この界隈も,元素のようにF-1からF-100くらいまでの100機種が現役だったら,何らかの愛称なり固有名詞が主体になるのではないかと予想している。

人類は直径1kmの球体容器に詰めることができる

人類の質量はどのくらいだろう。

仮に70億人x70kgで見積もったとして4.9億トン

人類の平均体重を70kgで見積もっても大きく超過することは無いだろう。人類の歴史を紐解くと700kgを超えるような個体もあるが例外的だ。世界を見渡してみると質量の小さな未成年が結構な割合をしめているし,肥満に悩まされているのは一部の先進国だ。おそらく真の平均は70kgより低い。

直径1kmの球形容器を水で満たすと約5.2億トンであり,肺の空気を抜くと人間の比重は1を超えることから,挽肉か何かにして隙間を完全に無くせば,恐らく地上にいるすべての人類は直径1kmの真球に納まるだろう。


直径1kmに納まる有機体を支えるために必要なもの

人類が2013年に消費した一次エネルギーは石油換算で127億トンで,直径3kmの球体に相当する。*1

水の年間消費量は,4兆トンくらいで直径20kmの球体に相当する。人類は農業や工業をはじめとした様々な用途で,毎時毎時自分の体重と同じくらいの水を消費している。

人類のエネルギー起源の二酸化炭素排出量は,環境省によると年間317億トンで*2,標準状態を仮定すると直径31kmの球体に相当する。ただし,気体は密度(または比容)が圧力に強く依存するため,実際に直径31kmの球体に二酸化炭素を詰めると,上と下で何倍もの密度差が生じる。

人類が呼吸で1年に消費する酸素は15億トンくらいで*3,大気は1km^2あたり210万トンの酸素を含むので,1年で東京23区あるいは琵琶湖の上空にあるすべての酸素を消費しつくす程度。無論,化石燃料の燃焼によって消費される酸素に比べれば少ないし,地球全体の酸素にくらべれば微々たるもの。

球体による可視化

日常的でない量を伝える文章では,様々な「原器」が用いられることがしばしばある。例えば,高さや体積を東京タワーや琵琶湖,富士山などで表現する手法だ。今回は,そのような原器を使うこと無く,単なる球体を使った表現で,大雑把な量的感覚が伝わるか試してみた。人類という存在が物質的にどのくらいの規模で,それを支えるのにどのくらいのリソースを必要としているか,すこしでも感覚が伝わると嬉しい。