超越的サンタクロースはウンルー放射を見たか
はじめに
サンタクロースが赤い服を着ているとされるのは何故だろう。昔のコカ・コーラのキャンペーンのせいといった現実的な主張はひとまず忘れ,赤熱しているからという仮説を考えてみる。
このエントリではサンタクロースが単独犯である場合について考える。単騎で夜(地球の自転を加味して24時間+α)のうちに世界中の子供達にプレゼントを配り切る超越的存在はどのようなスペックを有しているだろう。
移動速度は亜光速
単独犯である場合,サンタクロースは光に近い速さで移動できると推測される。世界中に散らばった配達先を一日で廻る事は、ジェット機やロケットの速度域では到底不可能だ。
どのくらいの速度が必要かは巡回経路長が決める。15歳未満の世界人口は20億人くらいなので、プレゼントの配達先は数億ノード程度。ノードの平均間隔は,配達先が地球表面に均一に散らばっている仮定でO(1) km と推定される(地球の表面積は海を含めて約5億平方キロメートル)。実際の人口分布は地理的に偏っているので,平均距離はより小さい。トータルの最短経路は10億 km を超えないくらいだろう。
一光日は約250億kmなので最短経路を一回通るだけなら光速の数%でいける。(まだ寝てない等の理由で)同じ地域に何度か再配達に行くことを加味すると,光速の何割かは欲しい。*1
恐らく物質透過能力を持っている
サンタクロースは空気と相互作用せずに移動可能だと推測される。というのも,亜光速のサンタクロースサイズの物体が単純に大気を押しのけて移動したら瞬時に人類が滅ぶからだ。単位時間に開放されるエネルギーは(分子流的なざっくりとした推定で)毎秒水爆数億発くらいはありそう。サンタクロース(と称するプラズマを纏ったビーム)が通過したところ幅数十キロメートルは瞬時に焦土と化し、中間圏に達するような火の壁が立ち昇る。しかし,そのような現象は観測されていない。
サンタクロースは空気だけでなく、石やコンクリート等も透過すると推測される。大気には1e-8 ~ 1e-7 kg/m^3 程度の微粒子が浮遊している。この程度の量であっても、サンタクロースの通過によって亜光速で弾き飛ばされれば進路にそって激烈な破壊が起きる。そのような現象も観測されていない。
以上により、サンタクロースは亜光速で物質を完全に透過しているかそれと同等の結果をもたらす手段を用いて移動していると推測される。
プレゼントは対生成?
サンタクロースのエネルギー源は何だろう。サンタクロースの軌道は,数億件の配達である以上,複雑にねじ曲がっている。反物質のような原理的に100%の効率を誇るエネルギー源を用いても,Δvが亜光速の軌道変更を何億回と繰り返すことは困難だ。
別の宇宙なり真空から得ているにせよ,外部から供給を受けながら飛んでいるにせよ,エネルギー・運動量保存を破っているにせよ,自身の質量を遥かに超えるエネルギーを扱う技術を有している可能性がある。
それほどエネルギーを扱えるなら,大量のプレゼントを持ち運ぶ必要もなく現場で物質を生成しても大した出費ではない。反物質でできた反プレゼントも同時発生することを懸念する方がいるかもしれないが,これほどの技術があるならばビッグバン直後に起きたとされるバリオン数生成,物質と反物質を非対称に生成するくらい朝飯前かもしれない。
超常の加速度
観測によると、サンタクロースの配達先はかなり精密に制御されており,部屋の中の別々の靴下に正確に配置するほどである。集合住宅のような複雑な配達経路を亜光速で通過する場合,ns 単位で進路が変わる。
ゆるく10 ns の時間でΔv ~ 0.3c とし,ガンマ因子を無視しても加速度は10^24 m/s^2に達する。
真空の輝き
中性子星の重力加速度を遥かに超える加速度にサンタクロースが平気だろう事はもはや驚くにも値しないが,これほどの加速度だとウンルー効果*2による放射が恒星の表面に匹敵する温度になると期待される。
恒星表面温度などこれまで述べた極限状態から見れば小春日和のようなもの。サンタクロースは平気だろう。
物質透過に関する議論によりサンタクロースは物質(の電磁場)を感じないと推定されるが,不可視存在ではないので,放射との相互作用は仮定して良さそう。移動中にウンルー放射に晒されているならサンタクロースの表面は放射と熱平衡になっていても良いだろう。
小休止で人間が視認できる速度まで減速したサンタクロースは,真っ赤に焼けた鉄のごとく輝いている。それを偶々目撃した人たちが赤い服を纏った神話的存在がいると誤認した。