格闘ゲームのデザイン:凶悪キャラグランプリについて

プログラムの歴史においてゲームプログラミングは、1958年にアメリカのハドロン物理の一翼を担うブルックヘブン研究所においてオシロスコープ上に展開された例のテニスゲームから今日に至るまでそれなりのブレイクスルーと種分化を経てきた。その中のひとつに格闘ゲームというジャンルが存在する。

一昔前に全盛期を迎え、現在はかなり衰退傾向にある分野だ。現在では一部のマニアのものへとシフトしつつある。
その方向性のひとつとして気になったのがこれ↓

ニコニコ動画(RC)

MUGEN 凶悪キャラグランプリ part1

7:36

07/10/30 16:54 投稿

MUGEN 凶悪キャラグランプリ part1

神やアドンを含む総勢32名の凶悪キャラによる祭典!神キャラ厨キャラ狂キャラ入り乱れての狂宴をお送り...

「ニコニコを張ったら負けかなと思う。」はさておくとして、いわゆる"厨キャラ"とよばれる中二病の作者によって作られたかのような酷い設定のキャラクターを集めて戦わせたものだ。

このようなキャラクターが作られる背景としては、キャラクターに対する異常な愛着から単に技術的限界への挑戦までいろいろあるだろう。後者は単なる無敵を避けつつ可能な限り無敵に近づけていく過程だ。

タメ無し一撃必殺、カンストコンボ、超速自動回復、ベホマ連打、全体攻撃、瞬間移動回避、飛び道具無効化、リーチ無限パンチ、作者名指定即死トリガー、異常ダメージ無効化、時間を止める。この手のインフレ競争の極限は「コンマ数秒KO」と「お互いに決定打が無くtime out 待ち」のどちらに傾くだろうか。また、無敵でないにしてもそういった自重できない設定同士の戦いはそれなりに見るに耐え細々とユーザーコミュニティを維持できる程度のジャンルになれるだろうか。

1フレーム(60fpsなら1/60秒)で画面の端から端まで移動し1秒に数十発の攻撃を行うキャラを生身の人間が操作することは不可能といえる。必然的にAI同士の戦いであり、優秀なAIの研究が要求される。相手AIの裏をかき如何に嵌めるか、特定の状況に特化するか汎用性を追及するか。その辺の攻防の動きが多少気になった。たとえば、すべての打撃に致死級攻撃力えるだけの安直な厨設定では、即死攻撃無効化であっさり打ち消されてしまうだろう。状況によっては敢えて弱い攻撃や、タイミングを調節することも必要になる。

このレベルになると相性や再生速度、フレームレートで勝負が決まってしまうことが多い。安定した凶悪さを保持するのは特に困難だ。どれだけの状況が想定できるか、どのような戦術が効率的か、どのトリガーキーを軸にした攻防を展開するか、プログラミングデザインのセンスとシステムに対する深い理解が問われる世界だ。