ポアンカレ予想について

何ヶ月かぶりにみたい番組があったのでテレビを見たよ。能動的にチャンネルを選んでテレビを見るの久しぶりだ。NHKスペシャルの「100年の難問はなぜ解けたのか 〜天才数学者 失踪の謎〜」という番組でポアンカレ予想に挑んだ数学者達の物語。

演出はいつものNHK的展開を多少残していたが、一般の方に理解しやすい構成だったのかは今の私には判定不能だ。可能な限り判りやすくかつなるべく正確性を喪失しないように苦慮して説明したつもりが、例えば「なぜ超弦理論で10次元が必要なのか結局なのかさっぱりわからなかった。」みたいな感想をもらうことも多い。結局大衆本をなぞる程度の説明が限度。

ちなみにポアンカレ予想自体はつい最近ペレルマン(Grigori Perelman)によって証明されている。何年か前に論文が出たときは専門外だったので、すこしだけ斜め読みして「結局、どーゆーこと?何したの?ちゃんと読み込むのめんどくさ。」みたいな感じだったけど、すこし腰を入れて読んでみよう。

つ論文 http://aps.arxiv.org/abs/math/0211159

証明はともかく、ポアンカレ予想が何かということを数学的に理解するだけなら理系学部卒程度の知識があればなんとかなるので興味がるひとは勉強してみるといいかもね。(位相幾何と多様体論はすこし補強した方がいいけど)

数式だけを見ていると非常に難しいことを言っているようにみえるかもしれないが、考え方自体は自然で単純だ(たぶん)。

曲がった3次元空間とかn次元空間なんてイメージできないという人がいるけど、「想像できるか」という経験的実感に囚われている限り、いつまでたっても数式というコトバのみに頼った思考の絶壁を越えることはできない。図など所詮は便宜的な偶像、もう少し柔軟に考えてもよいかと思う。想像力という目は枢要なれど、数学理論の地図を書き上げるのは視野ではない。測量器の使い方、その手法を支える前提、そして精密な測量の集積こそが世界を丸くする。