「地球温暖化詐欺」?

経済系の某氏が「地球温暖化詐欺」なるBBCドキュメンタリー映画を見たと言っていた。わりと痛快で面白いとのこと。地球温暖化に懐疑的な議論を集約した番組だ。「詐欺」と明言している。

構成の概略を効く限りではなかなか古典的で香ばしいのだが、見ないで評価を下すのはよろしくない。楽しそうなので、あとで時間があったら見よう。

アカデミックな世界では感情に訴えかければかけるほど訴求力が急速に低下していくが、属人的な議論や、ポジショントーク、安易な単純化が忌諱される世界はそれほど多くはない。

地道に査読論文を通すより、とにかくアンチをかき集めて、公聴会やメディア・出版といった外野で煽るような手法が先行して目立ってしまうと、アカデミックな領域での信頼を獲得するまでにかなり苦労することになると思うが、既に主戦場は科学の外なのだろう。

無論、IPCC報告書は科学だけで動いている訳ではないし、地球の気候メカニズムには議論を要する部分も残されている。また、天文学的/惑星科学における単純な視点では、このスケールの時間と幅の温度摂動を人為的な作用とそれなりの強度の因果で結びつけることはとても簡単な論証作業ではないという印象は受ける。そして、地球温暖化CO2主因説を正しいと思っている人たちの大部分は、別に専門的で包括的な議論を押さえているわけではないだろう。

ただ、いわゆる「懐疑論」がちゃんと「肯定論」に対抗できるぐらい綿密な研究を行い、着々と査読ペーパーを蓄積させているかというとそんなことは無い訳で、研究の質と量はまったくもって足りていない。

今はまだ証拠を積み上げる時期であり、この段階で全面戦争に走れば、「アポロ陰謀論」よろしくな文脈を無視した個々の論拠への一点突破戦術に陥ってしまう。全体のストーリーによって強化され、塹壕間の連携も緊密な巨大要塞に考えも無しに突撃すれば、マシンガンのような論文とQ&Aの十字砲火を浴びて壊滅する事は目に見えている。もちろん死んだ事に気づかない人たちは一定数いるわけだが、そういう人たちは研究には向いていないので研究者の意識から消去される。

地道な研究ではなく、頑になった外野の残念な煽り合いで推移した場合は「進化論vs反進化論」みたいなお寒い政治闘争が永遠に続く事になる。いったん、政治的な色がつけられてしまうと自由な研究もやりにくくなるよ。