陽子や中性子を素粒子として扱う業界ってどこにあるの?

最近知ったことなのだが,どうも高校物理の教科書には原子核より下のすべての構造を「素粒子」としている記述があるようで困惑している。

例えば第一学習社の教科書には以下の様な記述がある。

電子,陽子,中性子などの粒子は,物質を構成する最小単位として,素粒子として呼ばれている。
陽子や中性子核子)はクォークからなるが,素粒子と呼ばれることが多い。

第一学習社

また,啓文社啓林館の記述ではこうだ。

原子核より下の階層の粒子(核子クォークなど)を素粒子と呼ぶ。

啓文社啓林館:

無論,「内部構造をもたずこれ以上分解できない究極の構成要素」としている教科書もある。この場合,クォークレプトンゲージ粒子ヒッグス粒子のみが現在確認されている素粒子となる。

どうも教科書によって素粒子の定義がばらついているようだ。

研究の現場での定義

私が知る限り,陽子や中性子素粒子と呼ばれていたのは何十年も前の話だ。より基本的な粒子であるクォークが発見されたことで素粒子の座から転落した。現在も核子素粒子として扱っている業界は知らない。まだ数人の物理研究者によるサンプルしかないが,概ねハドロン素粒子とする定義に対して違和感を覚える反応で,「原子核より下の構造を素粒子とよぶ」とした人はない。


「いろもの物理学者」こと前野さんの反応も以下のようで

彼の見つけてきた資料では次のように書かれているようだが,現時点で,後者の定義で使っている業界は発見していない。

高校学校物理における「素粒子」の取り扱いに関する変遷
素粒子の定義としては,分割できない,内部構造を持たない究極の素粒子とする定義,自然の階層性に従い原子核の次の段階に来る粒子とする定義,がある。

拙速に「教科書の記述はおかしい」と主張することは避けたいので,誰かハドロン素粒子として扱う業界を知っていたら教えてくれるとたいへん嬉しい。