熱力学の勉強に使える教科書4冊+1本

オーソドックスな本ばかりになるが幾つか紹介しちゃうよ。

熱学思想の史的展開―熱とエントロピー

熱学思想の史的展開―熱とエントロピー

これは読み物でありいわゆる教科書ではない。数式や物理が分からなくとも読めるようになっているので、熱という思想がどう醸成されたかという科学史に興味があればこれを読むことをお勧めする。昔は熱や温度は曖昧な概念だった。熱は何らかの状態量だと考えられ、その物質的な実在基盤である「熱素」という仮想粒子が考えられていた。しかしそのパラダイムは破綻することになる。現在の熱学体系に落ち着くまでの科学者たちの様々な議論と紆余曲折の物語だ。

熱力学―現代的な視点から (新物理学シリーズ)

熱力学―現代的な視点から (新物理学シリーズ)

最初に読むなら恐らくこれ、田崎晴明という名の神が書いた最強の教科書だ。初学者から既習者まで広い範囲をカバーしている。Amazonのコメントが感激の嵐という物理書にあるまじき異常事態になっている。「泣きながら一気に読みました。」「この本が読める日本人でよかった。」「感動しました」etc

操作と仕事を中心に熱力学を構成していく非常にエレガントでわかりやすい理論体系であり、読んでいて楽しくなる本だ。記述は現代風であり、他の教科書を読んでもなんだかよくわからなかった人にもお勧め。余裕のある人は似てまったく非なる清水明先生の著書も忘れないであげてください。

Thermodynamics and an Introduction to Thermostatistics

Thermodynamics and an Introduction to Thermostatistics

世界で最もスタンダードな熱力学の教科書というと言いすぎかも知れないが、公理論的な構成で書かれた著名な教科書だ。日本語訳が上下巻で8000円とお安く買える。統計も含めてやるならランダウもあわせて読めばいいと思う。

大学演習 熱学・統計力学

大学演習 熱学・統計力学

演習するならこれ一冊で十分?もう古いとは言われているが、これを解けば熱力学と統計力学については十分な力がもたらされるだろう。

論文
とりあえずこの当たり?

The Physics and Mathematics of the Second Law of Thermodynamics
Elliott H. Lieb, Jakob Yngvason

あとL. Tisza(1966?)あたりの論文も適当に漁るとよいと思う。

基礎的な演習問題

(熱学的)温度とは何か。1000字程度で述べよ。(カルノーサイクル、断熱過程)

熱力学的音頭は温度は暑い寒いという"感覚"とは独立した概念だ。熱力学でよく聞かれるが、「エントロピーがよくわからない。」という人は、温度という概念が分かっていないことが多い。せいぜい系のエネルギーを比熱で割った量みたいな高校レベルの認識だったりする。また、理想気体でしか温度を定義できない人がいる。一般に物体の熱膨張率は一定でないし、温度計のメモリは厳密には等間隔ではない。温度の定義が説明できるようになれば、自ずとエントロピーについても分かっていることだろう。

 TdS=\delta Q

なんて式を物理的意味を理解しないで使っていないだろうか。