超新星は花火ではなく竜巻のように
新聞を読んでいたら超新星は丸くないという研究が出ていた。超新星には謎が多いし、それほど詳しい訳ではないが、花火のような大爆発ではなくジェットに近いというのは直感的に正しい気がする。そしてその極限としてlong-timeのGRBが視野に入る。そういえばHSTがGRB080319Bを観測したみたいだ。
SNの重力崩壊シミュレーションはたくさんあるが、いまだに第一原理からの爆発に成功した例はない。重力崩壊のエネルギーは星を木っ端微塵に吹き飛ばすのに申し分ないが、いくらシミュレーションを行ってもグシャグシャとつぶれてどわーっと外層が反転するところまでは行くけど、途中でフニャフニャと衝撃波が萎えてしまう。エネルギーが脱出できないのだ。星を貫くジェットはどちらかというと作りやすいが、均一な大爆発となると一苦労だ。
原因は極限状態でのハドロン物性(つまるところEOS)がよくわからないことが第一だろう。数億テスラという超強磁場がぐるぐると渦巻く500億度に達する灼熱炉の中で、サンシャイン60を芥子粒ほどの領域に圧縮した高密度物質がどう振舞うのか。これについては理論的な不定性が大きい。
また、そもそものマクロなメカニズム挙動の観測に不明な点が多いことも上げられるだろう。100分の一秒というフィルムの一コマにも満たない世界*1、太陽の何倍もの質塊が山手線ぐらいの大きさまで押しつぶされた最終過程の先に何があるのか。時空が歪み、光に近い速さで物質が押しつぶされていく。角運動量保存の法則により、コアはアイススケートの高速スピンの要領で加速され毎秒数千回転に到達する。強力なジェットが発生することは確かだろう。もちろん外層はすべて吹き飛ばなければいけないので、ただジェットが吹き出すだけではだめだ。
ガシッと潰れてから、莫大なエネルギーが解放されるコマまでの間に起きること。
*1:重力崩壊から反転までは500msとゆっくりしているとの話もあるし、衝撃波が星の外層部に到達するのはもっと後の話。