不老不死:脳ってRAIDできないの?

複数のハードディスクを用いたストレージネットワークを作る事で、データの冗長性やアクセス速度を高める技術をRAIDという。個々のHDDの寿命は無限ではないが、複数のHDDがバックアップを持ちお互いに補完し合うことで、半永久的にデータを保存することができる。これによりストレージサーバーは24時間安定したサービスを提供することができる。

これヒトで出来ないかな。

複数のヒトの脳でRAIDを組む事はできないだろうか。無数の人間の脳を統合したRAIDシステム、個々の「死」を超越した超人的な何かをつくれないだろうか。

存在が個体レベルに留まる限り、あらゆる生物学的な困難を乗り越えて「不老化」を実現したところで「死」を免れることはない。どれだけ健康的だろうと交通事故にあえばヒトは死ぬ。しかし、RAIDによって複数の個体に拡散した存在にしてしまえば、数千年が経過しようが、大災害で日本が沈没しようが死ぬ事はない。

不老不死、生命の合成、生命シミュレーションにおけるバイオロジーの未来CommentsAdd Staryun__yun

細胞の老化と個体の老化を分けて考えないといけない。

いくら細胞が不死になっても、個体の寿命には全くの無関係、むしろそんな空気読めない細胞は個体にとって悪影響しか及ぼさない。

細胞単体ならヒーラ細胞などの不死細胞の実例がある。でも、いくら細胞レベルで老化を防ぐことが出来ても次のステップへの高い高い壁がある。多細胞は単なる細胞の寄り集まりではない。

多細胞生物の細胞というのは非常にKYRであり、周りが老化の雰囲気なら自分もそれに乗る。細胞間シグナル伝達、というやつ。多細胞生物の挙動をなんとかしたいなら、ネットワークの上のレベルで操作してやらないといけない。

システムとして生命を理解しないといけない。

どうやってRAIDを実現するか

脳はビジョンチップやロボットアームに順応できるくらい可塑的で柔軟な存在だ。単純に「ケーブルや無線機器を挿して、電気パルスがお互いを行き来できるようになれば、あたかも一つの脳として機能するようになる。」とはいかないだろうが、少なくとも個体を不老化するよりは技術的ハードルが少ない気がする。

個体を不老化するには乗り越えるべきことがかなり多い。テロメアの制御、老廃物や沈着物の除去、脱分化、再組織化、活性酸素、ガン化対策、組織の磨耗、体液調整・・・・。あまり適切なたとえではないが、HDDをメンテナンスと部品交換で永久に使っていこうというようなものだ。そもそも数十年を超える運用を想定して設計されたシステムではない。


超人

数十億の脳、数十億の肉体、数十億の目と手足を有した存在は、現在の人間の知的限界を超越しうる。ある場所が平均の1.5倍程度*1発達しているだけで脳は恐るべき能力を発揮する事がある。将棋やチェス、数学や自然科学において、現在の人間には想像もつかないような世界を見せてくれるのではないだろうか。

そして、一つのストレージになっている以上、学校教育程度ならそのうち1個体を割くだけで済む可能性もある。世界史のコピーを何億ファイルと置いておく必要はない。数パーセントの個体が本を1冊ずつ読むだけで、億単位の書籍を取り込む事になる。

社会的にもRAIDしていない通常のヒトを圧倒するポテンシャルを有している。

*1:実に適当な数値である