距離可変式陸上:たとえば、10m差走

あるいは、短距離走者と長距離走者が同じフィールド上で戦うには

マラソンに以下のルールを加えたらどうなるだろう。

  1. 1位が2位に25m差をつけた時点で1位確定
  2. 優勝者が決まったら、2位が3位に25m差をつけたところで2位が確定と順番に決定していく

スタートから全力疾走して1位を獲りに行く短距離走者が現れるだろうか。2500m差ならともかく25m差や10m差走のルールなら当人の実力と機会があればなんとかなりそうなレベルだ。

そのまま放置するとほんの数秒でトロフィーを持っていかれるので、何人かは彼/彼女を必死に追うかもしれない。スタートダッシュ集団は体力を激しく消耗するため、最初の数十秒で勝負がつかなければまとめて舞台から消える。

温存と放蕩

スタートダッシュ組では勝負がつかないと決め込んででスタミナを温存する戦略もある。場合によっては、スタートダッシュ君を刺す役回りをみんな避けてしまって、逃げ切り優勝もあるだろう。また、何人かが追ったから私はいいやと思っていたら彼らはただのサクラで急に失速して1人だけ25m引き離して優勝、という不意打ちも可能だ。

誰も30m差をつけることなく勝負は42.195kmのゴールまでもつれこむかもしれないし、5km地点でつくかもしれない。固定された距離を想定してのスタミナ配分とは違った駆け引きや判断を要求される。はなから1000mにターゲットを絞ったペースで走る人もいれば、20kmぐらいをイメージする人もいるだろう。それぞれが得意な距離で勝負することができる。

どんなに優れた人間も1000m走者のペースで42.195km走ることは不可能だ。どのような戦略が最終的に高い勝率を収めるのかすこし気になる。例えば、スタートから25km地点、先頭走者が10mほど離している状況で、一気に勝負をかけてきたら、ペースを保って無視するか、無理をしても追うか?どちらが正解か。

ゴールのない螺旋

上記のルールがあれば42.195kmを無限大にしたレースも考えられる。ゴールの無いランニングだ。人より何メートル多く走ったかという相対量だけが評価され、他より30m差をつけた人間から勝ち組として順番に抜けていく。ただ人と同じように走っているだけの人間は何千キロ走ろうとも終わらない。隣人の走った距離と自分の走った距離は相殺されるのだ。