全地球史上で最大の生物個体は?

史上最大の生物個体となると、化石を含め実在が確認されている中では現存個体であるArmillaria ostoyaeおよびPandoが暫定史上最大個体であり、これ以上大きな生物が過去に存在した痕跡は発見されていない。だが、残っていないだけで現存種より大きな個体が過去に一度でも存在したであろうことは、生物の数十億年の歴史を考慮すればほぼ確実だ。数十億年での史上最大個体がたまたま現代に当たる可能性は限りなく低い。それが植物なのか菌類なのか私には想像がつかないが、どちらにしろ根を通じて増える類である蓋然性は高いし、巨大に成長するには数万年を超える長い時間と安定した環境が必要だ。ただし、単一の幹という部門での世界最大質量の樹木は3600トンであり、質量部門最大生物の半分にも達するので例のオニナラタケのように散開したものが史上最大だったとは限らない。

地上動物部門では非公認ながら60m超の体長を有していたとされる最大の恐竜「Amphicoelias」といわれる(下:ヒトとの比較は写真参照)。ただしこ推計値の信憑性のほどはやや疑問符がついている。公認の記録では35m程度(セイスモサウルスなど)がで史上最大の動物だろう。もっとも尻尾と首が長いだけで、胴体部分だけで見ればアフリカゾウをそれなりに大きくした程度だ。


海洋生物では長さ60mぐらいの細長い生物がはるか太古にいたような記憶があるがほとんど覚えていない。今でもクラゲの中には触手を40mぐらいのばすやつがいるようだけど(キタユウレイクラゲ)一応体長だよね。つまり、シロナガスクジラより体長が長い海洋動物ということになる。

哺乳類最大のシロナガスクジラではあるがこれは地球史上を見ても有数の大きさを誇る海上生物だ。33mという最大個体記録は現存種であることによる観測個体数の多さに支えられており、サンプルの少ない過去の生物と一概には比較できないが、シロナガスクジラに匹敵する大きさの種はほとんど存在しない。動物で200トン以上という体重は自力で支えられる限界を超えており、地上動物では不可能に近い数値だが、それに加えて種を維持するにはある程度の個体数が最低限必要であり、食物連鎖のピラミッドの頂点はそれほど大きくなれないこと、あるいは代謝を補うのに必要な餌の収集効率を考えると、いくら自重を支えなくてよい海中だからといって限界がある。シロナガスクジラはその限界に近い個体だ。

同一のDNAを有した連結有機体という意味でオニナラタケより遥かに大きな"個体"、何百キロもの大きさの生物(植物なり菌糸体なり)が地球史上出現していた可能性があったかというと厳しいと考えている。それほどの大きさに成長するには地上にしろ水中にしろ何百万年もの時間と豊かで安定した環境が必要であり、また、大きくなり過ぎればウィルスや新たな外敵に晒される危険性は高まる。同一遺伝子で構成されたコロニーで地上最長寿と考えられているものでせいぜい10万年。1万年に達するものすら数えるほどしか無い。たとえ癌のように不死増殖であっても何万平方キロメートルにも成長する前に病気や気候変化等にやられるだろう。とうわけで、地球史上をみても現役チャンピオンをそれほど大きく越えることは無かったと考えている。