具体的に鰻の消費をどう制限するか

鰻の危機的な状況が叫ばれて久しい。稚魚の漁獲高は激減し、絶滅すらささやかれている。その原因は様々に言われているが、禁漁ないし消費を大幅に絞るべき状況であることは言をまたない。有志が自主的に食べないだけでは不十分な状況であり、より広く強制力のある抑制が必要だ。

では具体的にどうすればいいだろう。

鰻専門店は生活のすべてがかかっているからある程度しかたないとして、コンビニやスーパーや外食チェーンといった鰻なしでも経営が成り立つ所でカジュアルに消費される分は削り落としたい。

業者あたりの扱い上限

たとえば一事業者につき販売できる鰻は年間XXXkgまでという制限を課すとどうだろう。小さな鰻屋なら問題ないが、全国チェーンで何千店舗とある業者だと一店舗あたり年間数百グラムに扱いを制限され意味のある商品展開ができなくなる。しかし鰻を扱うスタッフだけを個人事業主とするなど、抜け道があるかもしれない。

鰻取り扱い免許

鰻の提供に関してX年の修行や定期的な技術認定といった鰻一筋でやっている職人以外では維持困難な免許を導入するのはどうだろう。すくなくとも素人が片手間に取れる代物でなくすことで全国チェーンの個々の店舗で取り扱う敷居をあげることができる。

鰻保護税

消費を減らすには高額の税をかけてしまえばいい。たとえば『鰻を0.1g以上含む商品に1000円の税を掛ける』といった手法だ。専門店は2500円が3500円になっても凌げるかもしれないが、スーパーの切り身が800円から1800円、コンビニの鰻おにぎりが200円から1200円になったら、商品化を断念するところもでるだろう。

徴収した税は完全養殖の研究や河川の保護に使うなどの用途が考えられる

最後に

わたしは法律や食に関して素人なので発想に抜け道や不具合がたくさんあるだろう。他の人や専門的にやってきた方々の意見が知りたい。

R.I.P. Google Reader

Google Readerが息を引き取った。

8年10ヶ月の命、アクセスできると思ったら反応が悪くなったり、あるいはトップページにとばされたり、apiを受けつけなくなったりと、次々に生の兆候が失われていく生物みたいな死であった。

私にとってGoogle Readerはインターネットの中核だった。Google Readerを通してarXivの論文にアクセスし、知人のブログを閲覧し、大学事務の更新情報を読む。はてブなら複数のタグに属するエントリをまとめて閲覧する。Twitterのようなソーシャルに流行っているものしか集めないシステムではたりない部分に手が届くこまやかさがあった。

世界的にRSSは退潮著しく全盛期の数分の一までPVが低下しているとはいえ、こうやってGoogleに見捨てられる日がくるとは思わなかった。国内ネット大手よりはるかに末永く使えるものと考えてGoogle依存を高めつつあったので廃止のニュースには非常に驚かされた。

今回の態度からみるに、時代の流れ次第ではGmailですら廃止されうるのだろう。プロバイダメールより恒久的に使う中核的なアドレスにしてきたので頭が痛い。

最終的な評価だが、生産性を下げる側面もあったものの、ネットに数多あるサービスの中でとくに役に立つ素晴らしいサービスであったと思う。

スタッフのみなさま、お疲れ様でした。

以下のアドレスで献花ができる
The Google Graveyard

とりあえず避難先として以下の4つにエクスポートした。まだどれをメインで使うかは決めていない。

  1. http://reader.livedoor.com/
  2. http://www.feedly.com/
  3. https://digg.com/reader/
  4. http://www.feedspot.com/

数字が連続して並ぶ問題


今年の東大数学が面白い。恐怖の数字連続問題だ。

次のような自然数Aが存在することを示せ。

  1. Aは連続する3つの自然数の積
  2. Aを10進法で表記したとき、1が連続して99回以上並ぶところがある

受験生は誘導つきだったようだけど、時間のあるはてなー諸氏には不要だろう。誘導に囚われないことで別解も見つかっている。

これをみて以下の問題を思い出した。

√2を1億桁まで10進法表示する。このときどの数字も6000万個以上連続して並ぶことはないことを示せ。

ピーター・フランクルの中学生でも分かる大学生にも解けない数学問題集』が出典で、文字通り中学生にも問題文が理解できる良問だ。命題が正しいことも想像がつく。しかし、証明にはそれなりの模索が要求される。

あとは、この問題が面白い。

pを任意の素数、mを任意の自然数とする。このとき自然数nをうまく選べば、p^nを10進法で表したときその数字列に0が連続してm個以上並ぶ部分があるようにできることを示せ。出典:『2001年数学オリンピック本選』

数字が連続して並ぶ問題はけっこう骨のある問題になることがある。その戦闘力は時に最高レベルの高校生すら満足させる。しかし、難しすぎると投げてしまわないのが肝要だ。1時間考えて手も足も出なくても、1週間後に気づくことがあるのだ。そういう至福の瞬間を味わうには少々の忍耐が必要になる。

解答は以下の通り

続きを読む

銀河系を旅する彗星:太陽系の縁で起こっていること


図0. 富士山とパンスターズ彗星

パンスターズ彗星(C/2011 L4)が、おそらくその生涯でもっとも明るくかがやいている。ヤツはまだ日没直後の西空にいるので、運が良ければ(図0)のような光景を肉眼で観測できる。


図1. パンスターズ彗星の見え方

かの彗星はすでに70km/s (時速25万km) をこえて太陽系脱出速度に達しており、星図上の位置を刻々と変えている(図1)。すでに近日点を通過し、太陽系に対して露払いとなるヘラクレス座の方角に進路をとりつつある*1。あとはひんやりとした星の海にむかうだけだ。遠い未来、宇宙のどこにたどりつくか知らないが、もう太陽系には二度ともどってこない。

彗星、星の海を渡る


図2. 太陽系外縁部の構造
惑星の外縁にエッジワース・カイパーベルトと呼ばれるリングがあり(紫)、全体を包み込むようにオールト雲が存在している(暗灰色)。

彗星は氷が出来るくらい太陽から離れた涼しい場所で作られた微天体で、遠くはエッジワース・カイパーベルトやオールト雲からやってくると考えられるが(図2)、太陽系は閉じた系ではない。

太陽系の最外部は重力的拘束が弱い。何らかの拍子に太陽系から去っていく彗星があれば、逆に、他の恒星系から弾かれて何十億年という旅の果てに太陽系を通過する彗星もある。太陽系もメンバーに入れ替わりがあるのだ。*2

恒星系から弾きだされた彗星は、銀河系を相当数さまよっている。LINEAR計画による観測では1兆個/立方パーセク *3あたりが上限とされている。土星軌道くらいの範囲に1個以下という勘定になり、太陽とアルファケンタウリの間の空間だけで銀河系恒星数をこえるほどの彗星がうろついている。

銀河系を旅する彗星の特徴と、発見の状況

太陽系への来客を身内を見分ける方法はあるだろうか。

太陽系内を起源に持つ彗星は、離心率が1を大きくこえることはない(最高記録は1.058)。元々、太陽系にかるくトラップされていた彗星がちょっと軌道を乱された程度なので、最大でも太陽系からギリギリ脱出できる程度のエネルギーしかもっていない。近日点では猛スピードだが太陽系外縁部での速度はかなり遅くなる。楕円か、放物線みたいな軌道だ。

一方で、太陽系外からやってくる彗星は最初から太陽系との相対速度がけっこうある。太陽の重力を意識することなくまっすぐ飛んできて太陽近傍でカクンと折れ曲がる離心率の大きな双曲線軌道を描く(図3)。

残念ながら太陽系外からやってきたことが確実な彗星はまだ発見されていない*4。観測にかかるほど太陽に近接する頻度はそんなに高くないだろう。ただ、候補はいくらか存在しており、短周期彗星の96P/Machholz 1 などは、太陽系をちょっと通るだけだった彗星がたまたま木星によって手篭めにされた可能性が指摘されている。

96P/Machholz 1は太陽系外起源の彗星かもしれない - 忘却からの帰還

これから探査技術が発達すれば、太陽系外からはるばるやってきた彗星を特定し、そのサンプルを回収できる日も来るだろう。別の恒星系で作られた物質だ。同位体比や組成がことなる、あるいは新種の鉱物が見つかるかもしれない。


図3. 銀河を旅する彗星の軌道
太陽系外からやってきた彗星(赤い軌道)は、2つの漸近線の角度が大きく開いている

余:彗星による銀河系の酸素循環

彗星は汚れた雪球であるため、氷や石という形で沢山の酸素を含んでいる。彗星が旅することは酸素という元素が銀河内を旅する過程のひとつでもある。ヘリウム主体の白色矮星に対する質量降着の研究などから、あまり全体の元素輸送に貢献していないご様子ではあるが、銀河系のあまり知られていない側面だろう。

参考資料

The Demographics of Long-Period Comets
http://arxiv.org/abs/astro-ph/0509074

AN UPPER BOUND TO THE SPACE DENSITY OF INTERSTELLAR COMETS
http://iopscience.iop.org/1538-3881/141/5/155/

*1:太陽系もヘラクレス座の方向にむかっているので、正確な向きは異なるが、太陽に先行する形になる

*2:基本的に出て行くケースのほうが多い

*3:4.5 e-5 / au³

*4:η Crvのように、太陽系外における彗星発見ならある

天体衝突とはどのような災害か


図0. 地球に衝突する小惑星の想像図(直径10km)

最近、ロシアの大火球で1000人以上の負傷者が出た。直後に小惑星2012 DA14が地球をニアミスするなど天が慌ただしい。

天体衝突は小さな天体でも巨大な擾乱を引き起こす。生み出された衝撃波の威力に驚いた方も多いだろう(図1)。原子爆弾と同程度のエネルギーが解放されたが、高高度で爆発したため数十キロ圏に薄まった影響で済んでいる。

居住地に落ちることは珍しいが、今回の衝突は20年に1回くらい地球のどこかで起きている。日本に限定するなら20000年に1回くらいの事象だろう。*1



図1. 爆風の強度
(上) 響き渡る衝撃波の轟音
(下) 音はないが、物を吹き飛ばして屋内に吹き込む爆風の強さがみてとれる。この風の強さから衝撃波のエネルギーを類推することが出来る。


天体衝突は流れ星から大量絶滅まで幅広いが、ハザードの規模やリスクについて大まかに触れてみる。

まずは有名な事例から

A:ツングースカ級の衝突

1908年にロシアのツングースカで発生した天体衝突は半径30kmの木々をなぎ倒した (図2, 図3)。今回の数十倍以上のエネルギーが開放され、東京-沖縄間に匹敵する1000km離れた窓ガラスが割れたという。爆風半径よりずっと狭いが森林火災も発生している。

小さな天体は空中爆発することが多く、爆風がメインになる。 ただし、鉄隕石のように直径数メートルでも地上まで到達しやすいものがある一方で、長周期彗星のように直径が200mくらいでも大気圏突入に耐えられないものもある。(後者はちょっとした核戦争並の空中爆発もありうる)


図2. ツングースカの大爆発でなぎ倒された樹木


図3. ツングースカ事象の衝撃波(シミュレーション)
上空の爆発で発生した衝撃波が地上に伝わる様子がわかる。
https://share.sandia.gov/news/resources/releases/2007/asteroid.html
(@lh2nhiさんとの会話より)

リスクはどのくらいだろう。

地球上には約500基の原子炉が存在している。地球の表面積は5億平方キロなので密度は1基/100万平方キロ程度だ。ツングースカ事象の頻度を300年に1回とし、1回で3000平方キロの土地を焼き払うとすると、大雑把に地球のどこかの原子炉が被災するのは約10万年に1回という計算になる。個別確率では約5000万炉年に1回といった程度。*2

同様に、日本のどこかの県がツングースカ事象で焼き払われる確率は40万年に1回程度となる。2~3万年前の旧石器時代に、長野県の飯田に隕石が落下し、直径900mの御池山クレーターを形成したと言われている。おそらく爆発の規模は大型水爆に匹敵しただろう。大都市を直撃すれば100万単位の死傷者が出ることになる。


B:チチュルブ級の衝突

次に大きな衝突、(非鳥類型の)恐竜を滅ぼしたチチュルブ衝突事象について考えてみる。巨大な天体衝突は災厄の万国博覧会だ。衝撃波、輻射、化学汚染、津波地震オゾン層破壊、流星雨、酸性化、光合成停止……何でも揃っている。

B1. 灼熱の火球

水爆のような小さな爆発は火球が上昇気流によってキノコ雲を形成するが、チチュルブ衝突のように1億メガトンの爆発は違う。火球が大気の厚さより大きくなるので、周囲には真空しか存在しないので上昇気流もない。太陽表面より熱い灼熱の半球体が膨張しながらただ自由落下*3し、そのままペチャっと潰れる。

図4は、19841994年にシューメーカー・レヴィ第9彗星のG核が木星に衝突した様子を示したものだ。舞台は地球ではないが、衝突によって惑星サイズの火球が形成され18分後には完全に落下しきっているのが分かる。

地球上で火球を目撃する者はいない。それを肉眼でとらえる位置にいる者は松明になっているだろう。ただし、地球には地平線があるため、火球が焼き尽くすのはせいぜい百万平方キロの範囲になる。


図4. シューメーカー・レビィ第9彗星G核の衝突による火球
長さの基準が10,000kmであることに注意、月より大きい。

B2. 流星雨:降り注ぐものが世界を滅ぼす


図4b. 流星雨

火球の一部といってもいいが、エネルギーが数百万メガトンを超えたあたりから、破片が大気圏を貫通して宇宙空間に撒き散らされるようになり、惑星全体に恐るべき流星雨を降らせはじめる。

これは私達がイメージする流星群とはまったく別種の光の国からやってきた豪雨で、あまりに数が多すぎて世界は失明するレベルで照らされ、オーブンより熱く、物が自然発火するレベルの流星雨だ。流星は何十分も降り注ぎ惑星規模の大火災が発生する。

爆風や火球と違い流星雨は惑星に対する全体攻撃で、地平線遮蔽や逆自乗減衰が存在しないため、大衝突では他の効果より広範囲になる。

流星雨で高層大気は1000K~2000K以上に熱くなり、大量の窒素酸化物が生成されてオゾン層を破壊し始める。

この流星群を前にしては、国際宇宙ステーションに逃げても助からない。軌道上は数千億トンの破片による暴風が吹き荒れる。火球が減光するまでに一度でも地平線に入れば、太陽を何百と束ねたような熱輻射で焼却される。

B3. 衝撃波、熱風、地震

ツングースカと違いチチュルブ級になると爆風の影響はメインでなくなる。エネルギーが宇宙空間に逃げるのもあるが、衝撃波が致命的な力を有するのはせいぜい百万平方キロメートル程度だ。

爆心地からは灼熱の熱風が吹き荒れ、分厚いダストの雲が惑星全域に広がっていく。

衝突にともなう地震はM10ないしM11程度と推定されている。また、各地でM9の巨大地震を次々と誘発させる可能性はある。ただ、これは生物を滅ぼす上ではあまり関係ない。

B4. 津波

津波は内陸に数百キロに渡って侵入する可能性がある。太平洋側から押し寄せて日本海に抜けていくレベルだ。


図5. 津波の初期状態:クレータ中央部に形成される水塊

クレータに海水が殺到し、数時間かけて中心に富士山より10倍は高いはごろもフーズが形成され(図5)、それが崩壊して世界中に津波が広がっていく。

海の深さによる限界があるため、巨大衝突では津波に使われるエネルギーの割合が小さい。太平洋を想定すると、クレーターの縁で水深に相当する波高5000メートル程度、あとはエネルギー拡散から概ね距離の逆一乗則で見積もれる。遠くの海岸では数百メートルから数十メートルの波高になる。チチュルブの時は海が浅かったせいか津波はもっと小さい*4

B5. 恐竜にとどめを刺したのはダメ押しの追加効果

爆風と火球によって大陸が一つ焼き払われ、津波によって海岸が舐め尽くされても、それだけでは種を滅ぼすには至らない。流星が世界を焼き尽くしたところで、洞窟の中にいれば助かる。滅びは、さらなる追い打ちによってなされた。

  1. 衝突エネルギーが数百万メガトンを超えると、空は新月どころか肉眼で何も見えないレベルまで暗くなり、陸でも海でも光合成は完全に停止する(図6)。これにより植物、草食動物、肉食動物の食物連鎖が壊滅した。
  2. 深さ数百メートルまでの海と陸の全域は酸性化し、生態系にさらなる追い打ちをかける。石灰質の殻を持つプランクトンは溶けてしまう。
  3. 流星雨で焼きつくされた闇の世界に世界に追い打ちを掛けるように、衝突の冬が到来する。場所によっては30度以上気温が低下する場所もあったという。
  4. 他にも、有毒物質による汚染だとか諸々あるがこの辺にしておこう。

現代でこのクラスの衝突が発生したら、沿岸地帯の消滅、都市の焼失と食料生産の停止を覚悟した方がいい。何より明かりを得るのにも燃料がいる。この状況で、原子炉の保全等がどの程度要請されるかはわからない。

おそらく人類は滅びないだろうが、かなりの人口減は避けられないだろう。


図6. 空の明るさ
横軸(上)が衝突のエネルギー(メガトン) 、縦軸が日照量(大気の透明度)に対応する。10^6~10^7メガトンで急激に世界が闇に閉ざされていくのがわかる。(Toon et al. 1997 より拝借)

C:ツングースカとチチュルブの中間はどうなの?

中間では、中間的なことが起きる。


少し補足しておくとこんなイメージ

  1. 小さい衝突は途中で燃え尽きるかそうでなくても、石ころを撒き散らすだけだ。
  2. 100キロトン級のエネルギー(小型原爆相当)になると衝撃波の影響が地上にとどきはじめる。20年に1回程度。(今回の事象?)
  3. 10メガトン級(大型水爆相当、)になると数千平方キロの樹木をなぎ倒すほどの衝撃波を発生させ、火災などの影響も見られるようになる。ツングースカ事象(~1/300 years)
  4. 1000メガトン級の衝突は1万年に1度くらいであり、地上にも余裕で激突するようになる。海に落ちれば津波は大地震に匹敵し、大きな被害をもたらす。キノコ雲の高さは宇宙空間に達し、これ以上成長するのが難しくなる。
  5. 100万メガトン級は数百万年に一回であり、巨大津波や気候変動が生じる。天体の直径は1kmを超え、衝突点一帯は完全に壊滅する。億単位の死傷者が想定される。
  6. 1000万メガトン級で、世界中に流星が降り始め。世界は闇に閉ざされる。オゾン層が心配だ。
  7. 1億メガトン級になると、世界の酸性化が深刻化し、流星雨が全球に深刻な影響を与える。恐竜を滅ぼしたレベルの災厄に包まれる。

天体衝突による津波は巨大衝突ばかりが注目されるが、単位時間あたりの擾乱面積に関して言えば、小さな天体がたまたま大都市の近くにダイブするリスクがかなり効く。天体が地上に到達するサイズになると、海面に1kmくらいの穴を余裕で空けるので津波が無視できなくなる。

D. このような天体の所在はどのくらいわかっているか

宇宙は広い。地球近傍軌道に関して言うと、1km以上の天体ならほぼ発見されている。しかしより小さいレベルの天体となるとほとんど見つかっていないようなもの。


図7.地球近傍天体の分布
縦軸(左)が天体の数、横軸(緑)が天体の直径(km)

ちょっと古い絵になるので現在とやや状況が異なるが、青いのが存在していると推定される地球近傍天体の量で、赤いラインが2009年までに発見されたものになる。この時点だと、ツングースカ級の天体は10%以下、10mの天体だと数千分の一しか見つかっていない。


E.参考資料

著作権的にマズイ気がするが、恐竜の絶滅を扱った映像で、知る限り一番実感に近い。

http://dsc.discovery.com/video-topics/other/dinosaur-videos/last-day-of-the-dinosaurs-a-storm-is-coming.htm

決着! 恐竜絶滅論争 (岩波科学ライブラリー)

決着! 恐竜絶滅論争 (岩波科学ライブラリー)

2010年の有名な論文を書いたメンバーの一人であるK/Pg境界の第一人者によってかかれた一般書。いかに火山説のような他説がもう廃品回収に出すべき代物で衝突説がいかに素晴らしいかについて書かれている。

[http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/96RG03038/abstract:title=http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/96RG03038/abstract
]
Environmental perturbations caused by the impacts of asteroids and comets
Toon et al.
97年とやや古いが、天体衝突についてまとめられた素晴らしい論文、基本的にこの知識に基づいている。最近の結果だと、もうすこし衝突頻度は下げる方向かもしれない。

*1:日本の国土面積は地球の1300分の1、近海も含めるともう少し多い。

*2:注:原子力に関するオフィシャルな推計ではない。1桁くらいの誤差はある

*3:弾道飛行

*4:といっても、メキシコ湾の対岸で数百メートルはあるが

現代技術でメタルスライム族を乱獲するには

ドラゴンクエストIX国勢調査によると、もっとも狩られているモンスターはメタルキングだ。その数は2億匹を越え、人類の強欲によっていかに簡単に生物が絶滅させられ……という話はさておき、現代でメタルスライム族を狩るとしたらどういう手法があるだろう。

磁場

導体が強磁場を横切ると誘導電流が発生して、大きな制動が生じる。水飴で満たしたようにうごきを鈍らせることができるかもしれない。

また、強力な磁石がまかれた場所を、高速で突破しようとすれば、天空に弾き飛ばされることになる。メタルボディには不快な環境だ。

鉄のように磁石にくっつく体質な場合、捕まえるのはより簡単になる。一方、デイン系でまったくダメージを受けないことから室温超伝導体だと仮定した場合*1、別の調理法がある。

液体金属脆化

水銀やガリウムなどの液体金属は、メタルスライム族にとって猛毒になりうるだろう。身体を侵蝕しボロボロにしてしまう可能性がある。


液体窒素

液体窒素をかければカチコチにできる気がするのはターミネーター2のせい。多くの金属は低温で柔らかさを失い脆化する。場合によってはスズペストに罹ったオルガンのように破断するだろう。倒せないまでも大幅に防御力を落とせないかな。

ただ、冷えきる前に逃げられそう。

重火器

メタルスライム族が人間でも拳をあてられる程度の速度だというのなら、十分な連射速度と威力を有した火器で確実にとらえることが可能だろう。シリーズによるが防御力は1000程度なので、500強の攻撃力があれば一撃で葬ることができる。攻撃力が弱くとも、数発当てればよい。

メタルスライム族のはやさは公式動画をみても高々時速数十キロといったところなので、ミニガンをつんだヘリから逃れる術はないだろう。*2

どんなにすばやい生物も罠にはかかる

ところで、メタルスライムはネズミとりを回避できるほど頭がよいだろうか。

こういうので十分?

速度が仇になる罠がほしい。

速度センサーや仕掛け線に連動したトラップ、対金属粘着剤、追いこむように張られた網、ジャングルで鍛えられたブービートラップ、不用意にうごくほどリスクが増えるものがいい。

聖水

聖水に弱いケースがあるようだが、何が効いているのだろう。よく分からないので、王水で代用できるだろうか。メタルスライム族を溶かす酸も多分あるだろう。

その他

  1. メダパニは初期シリーズでよく知られる戦法だ。何らかのガスで無力化できるかもしれない。
  2. 最近のメタルスライム族は火炎耐性があるが、一時的な炎ではなく、テルミット反応みたいに厚い鋼鉄を溶融させるほどの熱になるとどうだろう。
  3. ある公式設定のように表皮だけがミスリル銀だとすると、ファラリスの雄牛のように火で炙り続ければ、中身にダメージが通りそう。
  4. メタルスライム族は水に沈む可能性がある。水場に追い込んだり、底なし沼に突き落とす作戦はありうる。
  5. メタルスライム族の養殖に成功したら村おこしになりそう。

*1:雷撃は高周波成分があるので表面抵抗は0ではない

*2:対ヘリだとラリホーは怖い

温度とは何か:負の絶対温度をめぐる疑問など

ひと月ほど前に流れた「負の絶対温度」のニュースに関して、興味をそそった反応をリストアップしておこう。

最初に、「永久機関が実現する!!!」みたいな反応は >/dev/null

2番目に、「負の温度がわからん」と言っている人がいる。ただ、このうち何パーセントが「正の温度」の定義を説明できるだろう。

3番目に、物理クラスターの一部だが、永久機関の実現といった誤解を打ち消すために、「レーザーの反転分布と同じ(笑)」などと、この研究の新奇性や研究グループ自体を過小評価する方々がいる。

この研究グループは、光格子を操ることにかけては世界最強クラスの実績がある。光格子における超流動Mott絶縁体転移や、量子気体顕微鏡による光格子1サイト内の原子観測といった、数々の偉業を達成している。また、多数の理論屋が在籍しており、理論面の基礎でミスを犯す可能性は低いだろう。既存体系を覆すような大発見ではないとはいえ、齧った程度で安易にdisれるほどつまらない成果でもないだろう

最後に、「負の温度がある場合、熱効率はどうなる?」「エネルギー表示の基本関係式が一価関数でないのは厄介なのでは?」といった疑問がある。負温度の熱力学はどのような姿をしているのだろう。

A1. まずは温度に対する日常的なイメージを忘れよう



Q. 温度とは何か


Q. 373Kの水と374Kの水蒸気では何が0.27%異なるのか







このQuestionに対してどう答えよう


図1.温度と体積変化と内部エネルギーは異なる量

温度は物体の内部エネルギーに比例しないし、熱膨張は一定ではない。浮世に理想気体は存在しないし、水銀温度計のメモリは厳密には等間隔ではない。別の量だ。

もちろん皮膚の刺激の強さに対応するわけでもない。皮膚は80℃のサウナより60℃のお湯を熱いと感じる。人体が感じる熱さは雑念になるので忘れよう。

温度の定義には「エントロピー」と呼ばれる小悪魔が住み着いている。それなしでも説明できるが、あったほうが幸せになれる。たぶん。

A2. エントロピー:熱を支配するもの

すこし復習


図2. 自然界は最大最小値問題に満ちている

物理学では現象をある関数の最大最小値問題として記述する手法がよく用いられる(図2)。例えば、光線sは屈折率分布nに対して光路長D(n,s)が最小になるように振る舞うし、粒子はその位置rや速度vに対して作用関数 ∫ L(r,v)dt を最小にするように運動する。

熱力学に関しても、内部エネルギーE、体積V、磁化M、……といった変数や拘束条件の組Xに対して、ある関数S(X)の最大値問題として記述することができる。

Sをエントロピーと呼び、自然なXによって書かれたS(X)は、対象の熱力学的情報をすべて含んでいる*1。例えば理想気体ならX=(E,V,N)に対して以下のS(X)がすべてを体現している。

 S(E,V,N) = NR ln\left( \left(\frac{E}{E_0}\right)^{c} \left(\frac{V}{V_0}\right) \left(\frac{N}{N_0}\right)^{-c-1}\right) + Ns_0

ここからPV=NRTやE=cNRTといった使いたい関係式を取り出すことができ、具体的な(E,V,N)を与えると、温度や化学ポテンシャルをはじめとした残りのすべての状態量が一つに定まる。*2

A3. 温度の定義

絶対温度TをS(X)の内部エネルギーE方向の傾きβで定義しよう。
(※ 簡単のためボルツマン定数kは1とする)


  \frac{1}{T} \equiv \beta \equiv \left(\frac{\partial S(E,N,V,M,......)}{\partial E} \right)_{N,V,M,......}

すこし説明


図3.2つの物体とエネルギーが移動する方向
aよりbの方が(∂S/∂E)が大きい。(∂S/∂E)が大きい方向にエネルギーの流れが生じる。bにΔE=0.1移ると、全体のエントロピーは0.19増加する。

図3のように宇宙に2つの物体a b のみが存在して、それぞれのエントロピーがSa(E)、Sb(E)とエネルギーの関数で書けるとしよう*3

両者を理想的な熱橋でつないで放置すると、全体のエントロピーS(=Sa+Sb)を増大させる方向にエネルギーの再配置が生じる。エネルギーにとって約束の地はエントロピー増加率β(=∂S/∂E)が大きい場所だ。βが大きいことを冷たい、小さいことを熱いと呼ぶことにする。

絶対温度Tはβの逆数として与えられる。日常生活ではTのほうが圧倒的に使うけど、物理学ではβもTも計算に応じて便利な方を使う。

エントロピーとβからみた熱いものと冷たいものが等温になる過程
  1. (孤立系の)全エントロピーSは常に増加する(ΔS=0の場合もある)
  2. エネルギーは熱いところ(β小)から冷たいところ(β大)に流れる
  3. S(E)は上に凸であり、Eが増えるほどβは小さくなる(Δβ=0の場合もある)
  4. 両者のβが等しくなった時、Sが最大(熱平衡)

A4. 負の温度は無限温度より熱い

もし、β<0になる物体があった場合、絶対温度T(=1/β)が負となることがわかる。物体をどんどん熱くして(β→小)、ついにβ=0に到達すると無限温度(T=±∞)であり、さらに熱くなってβ<0のときT<0でありこれを負の絶対温度という。


図4.温度の序列構造

βは符号によらず小さいほど熱い。β=+∞が最も冷たく、β=-∞が最も熱い。

Tは注意が必要で、T>0の範囲においてはTが大きいほど熱いが、T<0においてはTが小さいほど熱い。そしてT<0はあらゆるT>0より熱い。

(正の温度だけなら、カルノーサイクルで出入りする熱の比をもって絶対温度Tを定義するのが楽ちんだろうけど、負の温度を含むと議論がややこしい)

A5. 無限温度は世界を焼き尽くさない

  1. 無限温度(∂S/∂E)=0だからといってEが大きいとは限らない
  2. 無限温度は世界を焼きつくすとはいえない
  3. 負の温度(∂S/∂E)<0だからといってEが負であるとはいえない
  4. 同様に、負の温度も世界を焼きつくすとはいえない
  5. だたし、通常の物体は常に∂S/∂E>0であり負の温度にならない
  6. S ~ log E っぽいときE~T~1/β

A6. まとめ:エントロピーS、エネルギーE、温度T、逆温度βの関係

まとめると以下のようなグラフになる。


図5. S,E,T,βの関係

まず、エントロピーSは、エネルギーEが増大するにつれて増加していくが、S(E)が上に凸であるため傾き(β)は減少していく、鉄や空気のような普通の物質はいくらエネルギーが増加してもS(E)の傾きβが0 まで低下することはないが、特殊な系においてはSが最大値(β=0)を持ち、それを超えるエネルギーでは傾きが負になる。この領域が負の温度。

グラフ参照 http://www.quantum-munich.de/research/negative-absolute-temperature/

すこしだけミクロ状態の話

また、このエントリでは統計力学的な内容にあまり触れないが、図5では、ミクロ状態(例えば個別分子の運動エネルギー)の分布 n(E)が、正温度、無限温度、負温度の3つに対して描かれている(緑色の線)。n(E)はn(E)~exp(-βE) で表され、β>0の時は低エネルギー側に寄っているが、β=0でフラットになり、β<0では高エネルギー側に偏る。

総エネルギーはβが小さいほど大きい。

エントロピーはミクロ状態が全ての準位に均一に分布している時最大になり(β=0)、どちらかに偏っている時は小さくなる。
これに関してはC2の、参考リンクでいくつか説明されている


図6.ミクロ状態の分布と温度の関係
縦方向が個別粒子の持っているエネルギー(上が高エネルギー)。横方向は右に行くほど高温で、左が正の絶対温度、中央が無限温度、右側が負の絶対温度。無限温度や負の温度は、個別粒子のエネルギーに上限がある物体でしか成立しない。

さて実験のはなし、ここからすこし難しくなる

B1. 実験:今回の「負の温度」はどういう点が新しいか

この実験で使われている温度に関しては、"We use the textbook definition of temperature."と主張しているように、特に新しい温度を持ち出しているわけではないそうだ。

Negative Absolute Temperature for Motional Degrees of Freedom
http://www.sciencemag.org/content/339/6115/52

今回の研究で注目すべきは次の点だろう。

  1. 平衡状態
  2. 連続準位

B2. 実験:平衡状態を達成したのか?

特に、前者、どのくらい平衡状態とみなせるかはこの実験を評価する上でかなり重要な点だ。

基本的に熱力学は平衡状態のマクロ変数を記述する理論であり、上準位にポンピングしているような非平衡系に安易に適応することはできない。負温度の安定性からみても、完全な平衡状態を達成したとなれば一大事である。

当然、彼らも重要性は知っておりFAQで、レーザーのようなスイッチ切ればすぐ落下する軟弱者とは異なると強調している。

http://www.quantum-munich.de/research/negative-absolute-temperature/

Do your atoms really have negative absolute temperature or do they just behave like that?

Our atoms really have negative absolute temperature!
The way temperature is defined tells us the following: If a system thermalizes, i.e. tries to reach thermal equilibrium, and if we can describe the distribution of the system with some Boltzmann distribution, and if this distribution remains stable over some time, we know that the system has reached thermal equilibrium. We can then assign the corresponding temperature to the system. The system then really has this temperature. In our case, as the Boltzmann distribution of our atoms is inverted, this temperature is negative.

Do lasers also have a negative absolute temperature?

No! A temperature can only be assigned to a state in thermal equilibrium. This means states that, when left alone (when the system is thermally isolated) will remain stable and do not change over time. The particles in a laser medium do have an inverted energy population -more particles are in excited states than in low energy states- and their distribution looks indeed similar to a state at negative temperature. This inverted energy population, however, only exists as long as the laser is continuously pumped, i.e. particles are actively pumped into the exited states. When you switch-off the pump, all atoms will decay back into the lower state and their energy goes into the laser beam. So, while pumped, the laser medium is in asteady state, but not in a thermal state. It is not in thermal equilibrium and therefore cannot have a temperature.

読み違えている可能性が多いにあるが、論文を読む限り数百ミリ秒とそれなりに安定しているようであるし、コヒーレンスの崩壊時間も正温度と変わらないようなので、負温度に起因する不安定ではなさそうだ。

光格子からエネルギーをもらっている訳でもなさそうだし、フェッシュバッハ共鳴は磁場を固定した後は仕事をしない。特に外からエネルギーの補給を受けているようには見えない。

ただし、かなりこの分野は門外漢なので、細かい穴がどうなっているかを把握しきれているわけではない。真の平衡状態だと信じているわけではないのだが、指摘があると大変嬉しい。

物理クラスタはあっさりスルーしているけど、安定性に関する議論をもっと聞きたい。

B3. 実験の概要


図7.光格子


この実験では、光格子が六面八臂の活躍を見せている。レーザーの定在波をつかって光のグリッドをつくり、そこに粒子を流し込むと擬似的な結晶をつくることができる。

光格子が通常の結晶実験と異なるのは、その自在性である。無欠陥で不純物を含まない結晶をつくることができ、ポテンシャルの深さや格子間隔を自由に選ぶことが可能である。並べるのはボゾンでもフェルミオンでもよく、さらに、原子間相互作用を斥力から引力まで自由に変えることができる。ハバード模型のようなトイモデルを綺麗に再現するようなハミルトニアンを作ることができ、そのパラメータを自由に操作することができるのだ。

私が理解した範囲での、大雑把な実験レシピは

  1. 中華鍋ポテンシャルに、ボース=アインシュタイン凝縮の原子スープをおく
  2. ハミルトニアンを操作しMott絶縁体にして固めてしまう
  3. 固めている間に、中華鍋ポテンシャルを丘の上みたいなポテンシャルに置き換え、原子間相互作用も反転させる(斥力→引力)
  4. 再び絶縁体から溶かすとあらふしぎ、原子スープがポテンシャルの丘の上にあつまってなかなか落ちて来ません!
  5. 高エネルギーの方が多い状態になっている(負の温度)。しかも、結構安定している!(平衡?)

といったところ。

ちなみに、鍋や丘は光格子のポテンシャルに対応する凸凹がついている。速度分散だとかはトラップを切ってTOF (time of flight)で測っているらしい。普通の正温度で原子間相互作用を引力に変更するとBosenova とよばれる爆縮&爆発を起こすが、この状態ではそうではないらしい。

C1. 補足:マイナス温度の熱力学

再び熱力学の話

レーザーはの反転分布は非平衡系の話なので変なことが起きてもそこまで神経質になることはないし、スピン系負温度も現実には運動の自由度などと切り離せないので安定ではない。

対する安定な平衡状態としての「負の温度」が存在するかとなると、私はかなり疑わしく思っている。

負温度の物体に可逆仕事源を用いて仕事をすると、仕事をすることに何らかの制約を加えない限り、全体のエントロピーが減少していかにも苦しい。

また、内部エネルギーの不安定性も気になるところだ。負温度が存在する場合、内部エネルギーが自然な変数の組に対する一価関数でなくなってしまう。さらに悲惨なことに正温度と負温度でエネルギーの凸性が逆転しているようにみえる。これは(∂p/∂V)>0といった、悪質な関係式に繋がる。

ただ、負の温度では体積も圧力もマイナスとみなせば凸性は問題ないみたいな議論を聞いたこともあり、私の中で理解がまとまっていない。

この辺を詳しく知っている方がいたら話を伺いたい。

C2. 論文倫理:ダークエナジーが云々

最後に、ダークエナジー云々もdisられていた気がするが、これは別に論文の本筋じゃないので私は気にしない。超新星がどうのだとかモノポールがどうのみたいな記述にまったく眉をひそめないかと問われれば嘘になるが、ちょっと”壮大な”話を薬味として添えておくのは、さほどギルティではないと思う。

素粒子や宇宙だって、当人がどの程度信じているか疑われる”エキゾチックな”模型を引っ張ってきて唾だとかリミットをつけることはある。

無垢な記者が食いつくだろうことを知りつつ書くことの倫理的な是非については控えよう。

*1:自然なX:「自然な変数の組」については、適当な熱力学の参考書を参照されたし

*2:一応補足しておくと、エントロピーという関数が特別なのではなく、基本関係式と変数の組み合わせが凄い

*3:示量性はどうするの、というツッコミがあるかも知れないが そういう方は、適当に S(E)->εN*s(E/N)みたいな脳内補完で

*4:このエントリに関して助言を下さった某アカウントに感謝いたします