ではまず、地球を木っ端微塵に破壊するために必要なエネルギーを計算してみる。

地球なんて爆発すればいいのに、と呟く前に地球を破壊するために必要なエネルギーは何によって決まっているのだろう。地殻の岩石を砕くのに必要なエネルギーを積分すればいい?、単純に隕石とクレーターの大きさの関係からクレーターの直径が地球規模になるくらいのエネルギーと推定すればいい?

そのどれも地球を破壊するにはあまりにも少なすぎる。


NHKスペシャル地球大進化」で直径400kmの隕石が時速72000kmで地球に衝突するシーンの描写がある。様々なMADで流用されているのでみたことのある人も多いだろう。何年か前TSUTAYAで借りようとしてVHSしか置いて無くて苦労した覚えがある。それはさておき、太平洋ほどのクレーターが形成され、地球は4000度の灼熱の岩石蒸気に覆われる。解放されるエネルギーは10^28Jのオーダーになるだろう。しかし、これほどのエネルギーを投入しても地球は表面がドロドロに融解しただけで依然として形を保ったままだ。クレーターの形成は物質が右から左に移動しただけで、宇宙に飛び去ってしまった訳ではない。

地球爆破の最大の障壁、それは重力だ。物は投げれば落ちてくる。ニーチェの「重力の魔」ではないが、どんなに強力な爆薬で岩盤を吹き飛ばそうとも、吹き上げられた破片は速やかに地上に落下する。星は半壊しようとも速やかに重力で再結合する。この重力結合を上回ることは、惑星を溶かしたり砕くより難しい。

ロケットの打ち上げをみれば分かるように、物を重力を振り切って宇宙の果てまで飛ばすには相当のエネルギーが必要だ。わずか数トンの衛星を打ち上げるのですら相当のエネルギーを必要とする。ではこれが富士山ほどの質量だったらどうだろう、宇宙に飛んでいく光景を想像できるだろうか。オーストラリア大陸が宇宙に飛び去るのに必要なエネルギーは?そして、その数千倍の容積を有する地球が自己重力による束縛を振り切って宇宙に爆散するのに必要なエネルギーは?恐ろしいほどの値になる。

過程抜きで答えだけになるが、地球の自己重力エネルギーUは大雑把に以下の式で与えられ、「地球破壊爆弾」はこれ以上のエネルギー仕様が要求される。
U=\frac{3GM^2}{5r}=\frac{3 \cdot 6.7\times 10^{-11} \cdot \left( 6.0 \times 10^{24} [kg] \right)^2}{5 \cdot 6.3 \times 10^6 [m]}=1.9 \times 10^{32}[J]

指数が増えてもピンと来ないかもしれないが、これはたとえ地球が全てヘキソーゲンやスラリー爆薬で構成されていたとしても、木っ端微塵にならないことを意味している。地球と同じ大きさのダイナマイトがあっても地球は吹き飛ばない。それどころか、ダイナマイトは自身の重力を振り切ることができない。それだけ重力の束縛は強い。