撤去されない自転車をつくる技術

「駅前に放置された自転車が撤去される。リスクは認識して停めたはずなのにやられると悔しい。」そんなエピソードは世にありふれている。老若男女、国籍や学識を問わず、「放置→撤去」のコンボは後をたたない。

自転車が撤去されるリスクを取り除くには、駐輪場を探すか折り畳んで持ち運ぶか、いずれにせよ少しの労力で解決できる手段が用意されている。しかし、それすら面倒なようで、大量の自転車が駅前に駐輪されている。この状況に対して自治体は長年に渡って、社会インフラの整備や意識改善・・・(以下略

御託はさておき、自転車は撤去されたくないが我慢はしたくないという人が一定数あるようなので、我慢させるよりもイノベーションで富裕層向け(?)のハイテク自転車でもつくったら需要は・・・・・・・、無いだろうけど考えてみる。

いかにして自転車は撤去されるのか

まず、自転車の撤去手順だが概ね次のような感じだ。

  1. 駅前に放置する
  2. 職員が発見する
  3. マーキングする
  4. 開錠する
  5. トラックに積載する
  6. 運搬する

この各プロセスに介入することで撤去に対抗する。

「駅前に放置する」に抗して

駐輪するから撤去される。そもそも駐輪しなければ撤去されない。しかし、駐輪してしまった。

では、どうする?

持ち主の管理から離れても、駐輪しなければいい。

空中に退避:自転車は自ら折り畳まれると、突然白い翼を広げて空に飛び立つ、あとは駅上空で待機なんてシュールなUAV構想は、何十億か何百億かあればできそう。

走り続ける:停めるから違法駐輪なのであって、主人が帰ってくるまで勝手にぐるぐる走りつづければいい。まるで幽霊自転車だが、飛ぶよりは簡単そう。


ムラタセイサク君のように自動運転モードを導入することで「駐輪」による摘発を逃れる。

「職員が発見する」に抗して

放置されていても、職員が放置自転車と認識できなければ撤去はされない。

概念上の自転車は駅前に放置しても撤去されない。「まさかとは思いますが、この『放置自転車』とはあなたの想像上の存在にすぎないのではないでしょうか」メソッド、あるいはレモンを放置自転車にみたてて駅前の繁みの中に放置する。これを撤去できる職員は黴くらい。

実体のある自転車については、擬態や光学迷彩でやりすごすことになるだろう。光学迷彩メタマテリアルにでも期待して気長に待つとして、擬態はかなり低コストでいける手法じゃないかな。折り畳んだ後、消火栓や距離標、測量器具・植木鉢・カラーコーンに擬態すれば当座の取締りは逃れられるだろう。特に駐輪したい場所はたいてい駐輪禁止の標識が沢山あるのでそれに紛れてしまえばいい。


白々しくもカラーコーンに擬態した折り畳み自転車の想像図

「マーキングする」に抗して

職員は放置自転車を見つけてもすぐに撤去せず、説教を書いたタグを付けるだけのことが多い。つまり、タグ付けから撤去までの間に自動的にタグを外してしまえばいい。ハサミの付いたロボットアームと全方位モニター、振動センサーでリモートのオペレーターが呼び出されタグをチョキチョキする。

「開錠する」に抗して

一般に自転車が誰かに持っていかれないようにするには、チェーンなり鍵を掛けることが主な対策になる。しかし百戦錬磨の撤去職員にとって防犯チェーンなど糸屑同然、最近の敵に飢えた油圧カッターは太い鋼鉄の棒をパスタみたいに噛みきってしまう。チェーン状にしてゴム材でぐるぐるにすると多少油圧工具が苦手な状況をつくり出せるそうだが、ディスカウントストアに売っているホースみたいな太さのチェーンですら簡単に切断されて撤去されてしまうという。大型バイク用の何万もする巨大なチェーンで何重にもロックすれば多少は時間が稼げるかもしれないが、プロ中のプロである彼らに切れないチェーンなど存在しないと考えていい。

切られるのを待っているだけではだめだ。相手の得意なフィールドで戦うのは避けるべきだが、あえて抗するなら既存の鍵とはことなる方向、なんとかして切断工具に逆襲できないものかと考える。鍵に爆薬をセットしておいて、尋常でない圧力が加わったらその部分を吹きとばして工具を粉砕する。ただ、金属片が飛び散れば死傷者がでる可能性があるし、おそらく日本のいろいろな法律に引っかかってしまうだろう。

もうすこし消極的な抵抗策としては、傷口から腐食性の液体をジュクジュクさせる。催涙ガスやものすごい異臭を発生させる。堪難い音量の警告音を発生させて作業を妨害する。音量は日本の法令でどのレベルまで規制されているのかわからないが、スタングレネードのような作業員を失神させるレベルの衝撃音は、法令上はともかく技術的には十分可能なライン。あとはブービートラップがどこまで許されるか。

前項のロボットアームが作業員と取っ組み合えばいいと思うよ。

「トラックに積載する」に抗して

チェーンや鍵が破られてしまえば、あとはドナドナされるのを待つばかりの仔牛なのだろうか。

まだ対策はある。例えば人の手で持ち上げられない重さなら、その場でトラックに積むことが出来ず、クレーンを呼ぶための時間ぐらいは稼げるだろう。一台目のクレーンでもだめならもっと時間を稼げる。まず、フレームを太くし、中にぎっしりタングステンのブロックを詰める。手っ取り早い方法なら穴を空けて水銀を流し込むという手があるし、金が余っているなら比重22.6のイリジウムでも使うといい。タイヤに空気を詰めるなど論外だ。ゴムもいらない、総メタルで。

規格外の自転車は撤去に対して抵抗力を有している。タンデム式の自転車には重さが300kgを超え、軽トラックに乗らない大きさのものがあるという。車輪の大きさでは3メートルクラスが存在し、また、世界最長の自転車はその辺の電車の車両より長い。


世界最長の自転車:いつまでもトラックで持ち去れると思うなよ?

怪物を高密度の物質で置き換え、重りや肉厚を工夫すれば10トンクラスの自転車も十分に可能だ。放置の際はタイヤを決して回らないようにロックし引きずるか吊るしかないようにする。

アンカーを地下深い岩盤まで打ち込んだり、ガードレールや街灯に車体を溶接するのは、さすがに自治体の施設を破壊することになるので避ける。

「運搬する」に抗して

異臭騒ぎや轟音騒ぎがあって、警察やマスコミがよってきて大事になり、現地解体なり大型クレーンや巨大な輸送車量がよばれてしまった段階で、通常と同じ処理がなされるとは思えないが、とりあえず通常通り保管所に運ばれるとしよう。あるいは、今までのは無かったことにして、ここから対策開始でもいい。

要は、保管所に運ばれる前にトラックから自転車が逃げ出せばいい。R2-D2にもできる簡単なお仕事。